約 992,275 件
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/18416.html
登録日:2012/07/06 Fri 11 01 45 更新日:2023/01/03 Tue 15 29 24 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 MPLS しずるさんシリーズ エージェント チート ブギーポップ モービィ・ディック ライトノベル リセット 公務員 官僚 白鯨 統和機構 警察庁 雨宮世津子 「逃げられないウサギは、どうしたらいいのか――実は、これは問題の立て方から間違っている」 「要するに、追いかけっこが始まった時点でウサギの死は確定しているのだから、追いかけられないように、キツネが走り出す前に逃げていなければならないわけよ」 雨宮世津子はブギーポップシリーズを始めとする上遠野浩平作品の登場人物。 世界を裏から操るシステム「統和機構」に所属するエージェントであり、超常能力を持つMPLSである。 コードネームはリセット。取り消しの意。由来は自身の能力であらゆる事件を"なかったこと"にする。 双子の姉に雨宮美津子がいる。 表の顔は警察官僚内で警視総監ですら恐れるほどの権力を持つ人物。つまり公務員。 天性の難病を患っていた為、統和機構の改造処置を受ける前は、 まともに能力を使うことが出来ず、いつ死ぬかわからない子供時代を送っていた。 その為仕事をする上での信条として「後悔だけはしない、他人にもさせない」と思っている。 また姉とは異なり、曖昧なものはそのまま受け入れる性格。 この辺の割り切りもリセットと呼ばれる所以。 地味だが上品なスーツを着込み眼鏡をかけている為、社長秘書かやり手の若手女社長といった感じに見える。 官庁の支給品である車で登場することが多い。 実は初登場はブギーポップシリーズではなく事件シリーズの番外短編「ギニョールアイの城」。(メフィスト2001年1月号掲載・『彼方に竜がいるならば』収録) 空から落ちてきた隕石に自ら刺さりに行って死んだ男の調査をする為に派遣される。 ココでは統和機構所属であること等は明かされていないが、 いきなり出てきたパーキィに警告なく発砲する等ただの公務員でないことは示唆されていた。 ブギーポップシリーズでは「ホーリィ ゴースト」で登場。以降外伝「ビートのディシプリン」を始め様々な作品に登場する。 ◎MPLS能力 モービィ・ディック 名の由来は白鯨(モービィ・ディック)。 その能力は彼女の手から発射されるものの威力を自由自在にコントロールできるというもの。 極端に強くも、極端に弱くもできる。 手から発射するものは何でもよく、野球ボールでも果てはスイカやミカンでも構わないのだが、狙った所に当てやすいので拳銃を使用している。 具体的には、 頭部を破壊せず、脳内の重要な血管一本のみの破壊 部下の背中の脊柱を撃って麻痺を回復 学校の校舎を銃弾一発で破壊(巡航ミサイルレベル) 等。 威力の上限は明確にされていないが、 全力で使うと自分も巻き込まれるので、ミサイルレベルでも手加減している方らしい。 破壊の達人にして手加減の達人、という変わった能力。 統和機構の推測では彼女の掌から感知できないある種の特殊な超振動が発せられて、 それがなんらかの物体波動に干渉しているのではないかと考えられているが、その原理は把握出来ていない。 ◎登場作品(刊行順) ◯ギニョールアイの城 初登場の短編で、事件シリーズの番外編。詳しくは上述。 ◯ブギーポップ・アンバランス ホーリィ ゴースト ロックボトム事件を"なかったことにする"為ホーリィの前に現れる。 同時刻にピート・ビート始末の命が下されたため、何もせずに帰る。 この段階では能力の正体は不明。 ◯ビートのディシプリン 1、2巻に登場。ピート・ビートの抹殺の為に登場。ここで能力の詳細が明らかにされる。 バーゲン・ワーゲンに後始末を引き継ぐ。 ◯しずるさんと白雪姫(「しずるさんと無言の姫君たち」に収録) しずるさんシリーズに登場。なんと挿絵付き。 白雪姫事件の捜査・後始末の為に現場を訪れる。警察の皆さんはビビりっぱなし。 後始末で現場の雪山に能力で攻撃して雪崩を起こした。 ◯ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス 終盤に蒼衣秋良に電話しただけ。 ◯アウトランドスの戀/ポルシェ式ヤークト・ティーガー(ファウストvol.5に掲載 前者は『彼方に竜がいるならば』・後者は『戦車のような彼女たち』収録) 古猟邦夫の上司として登場。彼の能力について色々アドバイス。 ◯ブギーポップ・イントレランス オルフェの方舟 MPLSに敗北した合成人間ティア・ジャーカーの前に登場。背中を撃って麻痺を治してあげた。 ◯騎士は恋情の血を流す 統和機構の下部組織 オカリナ に仕事を持ってくる。 ◯ヴァルプルギスの後悔 4巻に登場。ヴァルプルギスの呼びつけに半信半疑。 ◯ドラゴンティスの雪(『彼方に竜がいるならば』収録) 『ギニョールアイの城』で会ったパーキィと再会し、ある依頼をされる。 追記・修正はミサイル銃弾を凌いでからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/qusf/pages/38.html
読書会について おおよそ隔月ペースで部室にて読書会を開いています。 課題本は基本的に部員から要望のあったものを選んでいます(あれば、ですが…)。 課題本を読んでいればどなたでも参加できます。 読んでいなくても参加できますが、読了後に参加することを推奨します。 だいたい土曜日に部室に集まってポテチ食べながらグダグダ駄弁ってるだけです。 そんな難しいものとかではホントないんで、普段本読んでないような方もお気軽にご参加ください。 部会で参加者を募っていると思いますが、飛び入り参加でも大歓迎です。 これまでの読書会の記録 ↓ここをクリックしたら各読書会のレポートに飛んだり飛ばなかったり。 回 日付 課題本 作者名 第1回 2007? 「ALL YOU NEED IS KILL」 桜坂洋 第2回 2008? 「マルドゥック・スクランブル」 冲方丁 第3回 2008? 「マルドゥック・ヴェロシティ」 冲方丁 第4回 2008/10? 「鏡像の敵」 神林長平 第5回 2008/12? 「猫の地球儀」 秋山瑞人 第6回 2009/2? 「あなたの人生の物語」 テッド・チャン 第7回 2009/4? 「沈黙のフライバイ」 野尻抱介 第8回 2009/6? 「星を継ぐもの」 J.P.ホーガン 第9回 2009/8? 「ようこそ地球さん」 星新一 第10回 2009/10? 「十五少年漂流記」 ジュール・ヴェルヌ 第11回 2009/12? 「老ヴォールの惑星」 小川一水 第12回 2010/2/27 「順列都市」 グレッグ・イーガン 第13回 2010/4/10 「戦闘妖精雪風」 神林長平 第14回 2010/6/5 「ゼロ年代SF傑作選」 SFマガジン編集部編 第15回 2010/7/9 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 P.K.ディック 第16回 2010/10/23 ナイトウォッチ三部作 上遠野浩平 第17回 2010/12/4 「ノーストリリア」 コードウェイナー・スミス 第18回 2011/1/22 「象られた力」 飛浩隆 第19回 2011/3/12 「冷たい方程式」 トム・ゴドウィン他 第20回 2011/5/28 「海を見る人」 小林泰三 第21回 2011/7/2 「ここがウィネトカならきみはジュディ」 テッド・チャン他 第22回 2011/10/1 「第四間氷期」 安部公房 第23回 2011/11/? 「ベガーズ・イン・スペイン」 ナンシー・クレス 第24回 2011/1/14 「アイの物語」 山本弘 第25回 2011/3/10 「故郷から10000光年」 ジェイムズ・ティプトリーJr. 第26回 2012/4/28 「ALL YOU NEED IS KILL」 桜坂洋 第27回 2012/5/26 「ハローサマー、グッドバイ」 マイクル・コーニイ 第28回 2012/6/30 「リリエンタールの末裔」 上田早夕里 第29回 2012/09/02 「幸せの理由」 グレッグ・イーガン 第30回 2012/09/29 「フリーランチの時代」 小川一水 第31回 2012/10/27 「たったひとつの冴えたやりかた」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 第32回 2013/5/? 「冷たい方程式」(新版) トム・ゴドウィン他 第33回 2013/6/1 「紫色のクオリア」 うえお久光 第34回 2014/3/14 「ヨハネスブルグの天使たち」 宮内悠介 第35回 2014/4/26 「天の光はすべて星」 フレドリック・ブラウン 第36回 2014/5/24 「know」 野崎まど 第37回 2015/2/28 「虐殺器官」 伊藤計劃 第38回 2015/5/23 「ハーモニー」 伊藤計劃 第39回 2015/7/4 「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」 チャールズ・ユウ 第40回 2015/8/28 「盤上の月」 宮内悠介 第41回 2015/12/5 「屍者の帝国」 伊藤計劃 第42回 2016/5/21 「ブロントメク!」 マイクル・コーニイ 第43回 2016/6/25予定 「旅のラゴス」 筒井康隆 課題本アンケート 注意書き 胸を張って薦められるならSFに限らない。 だからってCOMIC LOに多重投稿は止めろって! エロ漫画の品評会も悪くないけど、それはまた別の機会に。 順位 選択肢 得票数 得票率 投票 1 伊藤計劃「虐殺器官」 22 (20%) 2 北斗の拳 12 (11%) 3 竹宮ゆゆこ「とらドラ」 10 (9%) 4 アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ「ウォッチメン」 8 (7%) 5 ロバート・A・ハインライン「夏への扉」 7 (6%) 6 茜新社「COMIC LO」 7 (6%) 7 トム・ゴドウィン「冷たい方程式」 6 (5%) 8 ダニエル・キース「Flowers for Algernon」 5 (5%) 9 アーサー・C・クラーク「2001年宇宙の旅」 4 (4%) 10 小川一水 「導きの星」 4 (4%) 11 グレッグ・イーガン「ディアスポラ」 3 (3%) 12 劉慈欣「三体」 3 (3%) 13 小松左近「果しなき流れの果に」 3 (3%) 14 弐瓶勉「BLAME!」 3 (3%) 15 木城ゆきと「銃夢」 3 (3%) 16 秋山瑞人「鉄コミュニケイション」 3 (3%) 17 グレッグ・イーガン「TAP」 2 (2%) 18 グレッグ・イーガン「祈りの海」 2 (2%) 19 宮部みゆき「ステップファザー・ステップ」 2 (2%) 20 エンジン・サマー 1 (1%) その他 投票総数 110
https://w.atwiki.jp/library801/pages/24.html
か行の更新日:2012-04-29 開高健 「パニック」『弔辞大全〈1〉友よ、さらば』『弔辞大全〈2〉神とともに行け』 海堂尊 「チーム・バチスタの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」《田口・白鳥シリーズ》 加賀乙彦 「帰らざる夏」「湿原」「スケーターワルツ」「死刑囚の記録」「フランドルの冬」「異郷」(「帰らざる夏」続編) 柿沼瑛子 『耽美小説・ゲイ文学ブックガイド』(柿沼瑛子編集)「このささやかな眠り」(柿沼瑛子翻訳) 垣根涼介 「午前三時のルースター」「ヒートアイランド」 笠井潔 《矢吹駆シリーズ》 風間一輝 「漂泊者」「されど卑しき道を」(別題「不器用な愛」)「片道切符」《漂泊者シリーズ》 梶井基次郎 「Kの昇天」「檸檬」 鹿島茂 「妖人白山伯」 鹿島田真希 「ナンバーワン・コンストラクション 」 梶山季之 柏枝真郷 《DESPERADOシリーズ》 春日井健 片山愁 「銀河鉄道の夜」(漫画) 勝田文 「プリーズ、ジーヴス」(漫画) 桂望実 「RUN!RUN!RUN!」 加藤周一 『羊の歌』 加藤守雄 「わが師折口信夫」 上遠野浩平 「ソウルドロップの幽体研究」《戦地調停士シリーズ》《ブギーポップシリーズ》 金井美恵子 「タマや」 金城一紀 「レヴォリューションNo.3 」「フライ,ダディ,フライ」《ゾンビーズシリーズ》 金原ひとみ 「アッシュベイビー」 狩野あざみ 「博浪沙異聞」「亜州黄龍伝奇」 加納朋子 「ぐるぐる猿と歌う鳥」 加門七海 「おしろい蝶々」「呪の血脈」「浄眼」(『蠱』所収) 唐沢俊一 『トンデモ美少年の世界』 川上弘美 「濡れた女の慕情」(『どこから行っても遠い町』所収) 川島誠 「800」 川端康成 「少年」「川端康成・三島由紀夫往復書簡」「朝雲」(『書物の王国 (10) 同性愛』所収) 河村朋子 「魔の水」「人と鬼と」 神林長平 「戦闘妖精・雪風」「ライトジーンの遺産」 菊池寛 「半自叙伝」「形」 菊地秀行 「妖美獣ピエール」《魔界都市シリーズ》「青白き堕天使」《吸血鬼ハンターDシリーズ》「魔性淫指」「魔殺指鬼」 菊池勇生 「螺旋に回転する世界」 菊村到 『硫黄島・ああ江田島』 如月みこと 「影人たちの鎮魂歌」 岸田 理生 「1999年の夏休み」 岸武雄 「千本松原」 北方謙三 「ただ風が冷たい日」「残照」《ブラディ・ドールシリーズ》《約束の街シリーズ》「黒龍の柩」 北川歩美 「僕を殺した女」 北原白秋 北村薫 「六の宮の姫君」 北村季吟 「岩津々志」(『書物の王国 (10) 同性愛』所収) 北杜夫 「幽霊」「人間とマンボウ」「どくとるマンボウ青春記」「マンボウ阪神狂時代」 北森鴻 「孔雀狂想曲」「蜻蛉始末」 北山猛邦 「『アリス・ミラー城』殺人事件」「踊るジョーカー」 城平海 「アンナ・カハルナ」 きむらゆういち 「あらしのよるに」「あるはれたひに」「くものきれまに」「きりのなかで」「どしゃぶりのひに」「ふぶきのあした」「まんげつのよるに」 清野栄一 「デッド・エンド・スカイ」 京極夏彦 「鉄鼠の檻」《京極堂シリーズ》 桐野夏生 「メタボラ」「グロテスク」「水の眠り 灰の夢」 銀色夏生 「走る部屋」(『夕方らせん』所収) 金田一京助 楠木誠一郎 「念写探偵加賀美鏡介」 久世光彦 「陛下」 工藤直子 「ねこはしる」「てつがくのライオン」「ともだちは海のにおい」 国枝史郎 「鵜片を喫む美少年」「神州纐纈城」 国木田独歩 「画の悲しみ」「忘れ得ぬ人々」「東京の三十年」「馬上の友」 倉知淳 「星降り山荘の殺人」《猫丸先輩シリーズ》 倉橋由美子 「幻想絵画館」 クラフト・エヴィング商會 『アナ・トレントの鞄』 栗本薫 「朝日のあたる家」「真夜中の天使」「いとしのリリー」 黒川博行 「二度のお別れ」「雨に殺せば」「八号古墳に消えて」「疫病神」「国境」「暗礁」《黒マメシリーズ》《疫病神シリーズ》 黒崎宏 「ウィトゲンシュタインの生涯と哲学」 剣持鷹士 「あきらめのよい相談者」 小池真理子 「無伴奏」「ナルキッソスの鏡」 礫川全次 『男色の民俗学』(礫川全次編集) 小泉武夫 小泉八雲 「耳なし芳一」「茶碗の中」 香月日輪 《地獄堂霊界通信シリーズ》《妖怪アパートシリーズ》「妖怪アパートの幽雅な日常〈4〉」 剛しいら 「座布団」(BL小説) 越谷オサム 「ボーナス・トラック」 小島小陸 「一滴の嵐」「騎行船」(webちくま 07/09-07/12連載 単行本化未定) 小島政次郎 「眼中の人」 五條瑛 「スノウ・グッピー」「プラチナ・ビーズ」「スリーアゲーツ」「夢の中の魚」「君の夢はもう見ない」「黒を纏う紫」「断鎖」「心洞」《鉱物シリーズ》《革命シリーズ》「冬に来た依頼人」「赤い羊は肉を喰う」「動物園で逢いましょう」「天神のとなり」《ROMES 06シリーズ》「KUNIMORI」 ごとうしのぶ 《タクミくんシリーズ》(BL小説) 後藤みわこ 《ボーイズ・イン・ブラックシリーズ》 古処 誠二 「UNKNOWN」「未完成」「ルール」「七月七日」 近衛龍春 「高坂弾正」 木原音瀬 小林恭二 「モンスターフルーツの熟れる時」 小林多喜二 「蟹工船」 小林秀雄 「作家の顔」 駒崎優 「運命は剣を差し出す」《バンダル・アード=ケナードシリーズ》 小松左京 「星殺し」(『神への長い道』所収) 小村小芥子 「うさぎのダンス」 近藤史恵 「凍える島」《今泉文吾シリーズ》「タルトタタンの夢」 今野敏 「イコン」《東京ベイエリア分署 安積警部補シリーズ》《STシリーズ》《隠蔽捜査シリーズ》「隠蔽捜査」「果断」「山嵐」 今野雄二 『きれいな病気』
https://w.atwiki.jp/jojobr3rd/pages/235.html
人と待ち合わせをするとその人の性格がよくわかる。 相手を待たせては悪い、そう考え10分、15分前から集合場所にいるなんてざら。そんな義理堅い人もいる。 少しぐらいは大丈夫だろう、俺とあいつの仲だから。そう言って平気で5分、10分の遅刻を繰り返す人もいる。 約束や誓いは時に困難を極める。言葉に含む意味以上のものを持つ時だってあるのだから。 あまりに拘りすぎると、義理堅いヤツから堅苦しいヤツに。ルーズすぎると、おおらかなヤツがだらしないヤツに。 一概にどうすればいい、とはいえないのが難しいところ。相手の気持ちもわからなければ、自分の感情ですら時に大きく移り変わる。 周りを見渡してみてみるといい。 笑いが絶えない、明るく理想的ともいえる家族関係。今では言葉も交わさず、顔も見合わせない仲。 互いに尊敬の念を抱き、高みへと励まし合う友人同士。ほんの少しのすれ違いから絶交へと拗れていく。 熱っぽく、らんらんとした目で愛を語り合うカップル。数日後、顔を真っ赤に、罵倒合戦。 誓いも、誇りも、約束も。存外馬鹿げたものなのだ。正直者がアホを見る。 固く育った杉が真ッ二つ。固ければ固いほど、それは半面脆さを持つ。のらりくらりの柳は折れやしない。 必ずなんて言葉は必ず使ってはいけない。絶対なんて絶対この世にない。そんな奇妙なパラドックス。 心が壊れる音がする。あまりにも馬鹿げた理由で、人は人でなくなっていく。 ◆ 奇妙な形の影が行く。大地を踏みしめ、大きな身体が一歩、二歩、ずんずん前へと進んでいく。 通りがかった街灯が影を照らした。巨大な男が少女を担ぎ、闇の名からぬっと姿を現した。 男の名はタルカス、少女の名はスミレ。一人の可憐な少女と、忠義に厚い西洋騎士。 二人の会話は街並みにこだまし、あたりに響いていく。騎士は周りを鋭い視線で警戒し、少女は無邪気に笑顔を見せている。 ナイトとプリンセス、大小歪な二人はどんどん道を進んでいく。 「だ、か、ら! 言った、じゃ、ない!」 「しかし、スミレ、使えるものは使わなければ……」 言葉の区切りごとに振り下ろされる小さな手。ペチペチと頭をはたかれるが、所詮子供のじゃれあいだとタルカスは気にも留めない。 彼の顔が曇ったのは別の理由だ。暗闇の中で遂には見つからなかった自分のカバン、ついさっきの自分の短絡さに思わず仏頂面になる。 そんなことを知ってか知らずか、少女は少し意地悪そうに、大男をからかい始めた。 「なぁに、タルカス、そんなに不安なの? アンタ、そんなでかい図体してるのに意外に憶病なのね」 「そうではない。しかし少しでも可能性があるのであれば、少しでも確率があがるのであれば、これを使わない手はないだろうが。 それに地図をなくしたらどうする? 水は、食料は?」 「なんとかなるわよー! そんなことより早く行きましょ! 向かうはシンガポールホテルー、シンガポールホテルー!」 「……まったく、呑気なものだ」 タルカスはそう呟く。 少女はあまりに無警戒で無防備だ。自分が守るしかないと気合を入れなおしたタルカスは、一際注意を払い闇へと目を凝らす。 ここは戦場、一時だって気は抜けやしないのだ。 しかし、そこまで考えたタルカスは頭上に跨る少女の笑い声に頬を緩める。そんな無邪気さに彼は救われたのだ。そんな少女の器の大きさに、彼は安らぎを覚えたのだ。 無邪気で、いたずら好きで、口の悪さは折り紙つき。元気で朗らかな、じゃじゃ馬娘。そんな彼女だったからこそ、彼は救われたのだ。 かつて虚しさの果てに見つけた、メアリーのような底なしの優しさ。スミレにはそんな優しさがあった。 誰にでも、どんな相手にでも慈愛の手を差し伸べてくれるのだ。呪いに打ち負け、皆殺しに走ろうとした自分すら、彼女は受け入れた。 守りたい。タルカスはそんな彼女を守りたいと思う。 そんなことだけかと人は言うもしれない。彼も自覚はしている。きっと他人からしたら馬鹿げた理由なのだろう。 でもそれで充分なのだ。タルカスは誰かのために戦い、誰かのためにしか生きられぬ、馬鹿で愚直な戦士なのだから。 頭上のスミレが軽口をたたく。戦士である彼には気の利いた事など言えない。率直に飾らずに自分の気持ちを正直に伝える。 その真っすぐさが面白いのか、スミレは笑いをこぼし、続けて言葉を返してくる。 なんでもない会話ですら平穏を知らない彼にとっては貴重な時。忠誠を誓った相手との代えがたき悠久の時。 だがそんな時も永くは続かなかった。 ここは戦場。血が洗い流され、死屍転がる慈悲なき場所なのだ。 「ッ!」 「きゃっ!」 風を切る鉄鎚、街灯横切る影が二人に飛びかかってきた! 決して緩めていたわけではない緊張感、張り巡らしていた警戒網を潜り抜け、突然の急襲。 タルカスはこの一撃に対し横ッ跳び、何とか紙一重でやり過ごす。しかし頭上にまたがるスミレの悲鳴に思わず怯んでしまった。 隙を見逃さず、相手は容赦なく追撃! 鼻先をかすめて行くのは鈍く光る鉄の塊。スミレの事を考えるといつもどおりに飛び回るわけにもいかず、タルカスはすぐに劣勢へと追い込まれてしまった。 スミレから預かった槍を操り、なんとか相手の攻勢をしのいでいく。重いハンマーの衝撃に、両手がジン……と痺れだす。 振り上げられては振り下ろされ、そうかと思えば横から刈り取るよう振るわれる鉄鎚。相当な重さであるはずなのにそれを感じさせない凄まじい速度。隙を見せない相手はかなりのやり手だ。 だがタルカスはそんな相手に攻めに出た! 普通であるならば及び腰になるところで逆に打って出る! 敵の第二陣が来る前に、彼は手の中の槍を鋭く放った! このままではじり貧、手の中の槍もこの攻撃を受け続けていたらいずれ壊れてしまう。なによりスミレの身が危ない。 そう判断したタルカス。槍を突き刺し、振り回し、相手とは対照的に手数勝負の技巧戦術。スミレを担ぎ、慣れない得物であるが、それでも彼は歴戦の勇士。次第に立場は変わり、防戦から攻勢へと状況は変わっていった。 ほんの少しでいい、相手の隙を作り出したい。僅かでいい、スミレを逃す時間が欲しい。 相手の脳天目掛け振り下ろされた槍は金槌の柄により防がれた。跳ねあがった槍の衝撃そのままに、後ろへ跳び下がるタルカス。だが必死につかまるスミレの押し殺した声に、思わず足を止めてしまった。 闇の中、ぼんやり映る相手の影は動かなかった。カウンターを警戒したならば、なかなか慎重な相手だ。 それは決してタルカスにとってのプラスにはならない。慎重な相手であるならば尚更、スミレという弱みを見逃すことはしないだろう。 しかし時間を稼ぐならば、一度状況が落ち着いた今この時しかない。タルカスは肺一杯に空気を吸い込むと、空気を震わせるような大声で怒鳴った。 「名乗りもせずに襲いかかるなど卑怯千万ッ 戦士であるならば堂々と姿を現し、名乗りを上げてみせろッ!」 流れる沈黙。相手は声を返さず、だがタルカスの予想とは反して、大きく反応を示した。動揺したのか、驚いたのか。しかしはっきりと暗闇の中で動く気配を感じた。 貝のようにがっちりとしがみついていたスミレを下ろし、相手の反応を伺う。何をそんなに迷うことがあるのか、影はいまだ揺れ続け、声も発さず、姿も見せない。 タルカスは迷う。沈黙からは何も読み取れなかった。次の一手の決め手がない。 相手の腕を考えると受け身に回るわけにもいかない。かといって攻めに出るか? しかしスミレを放っておくわけにもいかない。 ならば逃げるか。敵前逃亡は騎士道精神に反する。なにより、スミレを抱えてこの相手に逃げ切れるとは到底思えない。 硬直状態、互いに相手の様子を伺う状況を動かしたのは謎の襲撃者だった。 タルカスの目の前で街灯の元へ姿を現した謎の人物。その顔に光がさした時、タルカスは思わず手にした槍を取り落としかけた。 「……タルカス」 「……ブラフォード?」 幾度となく死線を乗り越え、背中を預けた戦友がこちらを睨みつけていた。背筋も凍るような殺気に溢れた目つきで、タルカスを見るブラフォードがいた。 ◆ 「どういうつもりだ、タルカス」 「それはこっちのセリフだ…………」 ブラフォードの問いに、タルカスも問い返す。知り尽くしたはずの相手の変わりように、互いに動揺は隠しきれない。 タルカスはブラフォードの変わりように驚くほかない。凍りつくような視線もだが、皮膚がひりつく殺気は決して戦友に向けられるべきものでない。 なにより身体にあいた大きな穴。向こう側の景色が見えるのではないかと思えるぐらいの大穴だというのに、血が一滴も流れていなかった。 ブラフォードもタルカスの変貌に眉をひそめる。鬼人、悪魔、怪物。そう評された男が不抜けた犬へとなり下がっていた。どこのものとも知らぬ小娘を抱え、騎士道気取りの間抜け面。 なによりタルカスはブラフォードと共に屍生人として蘇ったはずだ。だというのにその姿は間違いなく、生前のタルカスそのものだった。 ブラフォードが目にも止まらぬ速度で鉄鎚を振るう。舞いあがった風がタルカスとスミレ、離れて立つ二人の顔を撫でるほどの速さだった。 鉄鎚をスミレのほうへと向けると、ブラフォードは言った。 「なぜこんなモノをつれているのか、そう聞いているのだ、タルカス。 我らが忠誠を誓ったのはメアリー女王、そして屍生人として我々を蘇らせて下さったディオ様だ。 であるならばこんなモノは無用な存在。それともその少女はなにか? 主君にささげる生贄か何かか?」 「屍生人……? ディオ様……? 一体何を言っているのだ、お前は。それより傷は大丈夫なのか? その体、一体お前の身に何が起きているのだ?」 「とうに朽ち果てた身体、だが夜に生きるものとして生まれ変わった代償に我々は生きる屍となったのだ。血なんぞ流れるわけがなかろうが」 困惑の表情を浮かべるタルカス、苛立ち気に顔をしかめるブラフォード。噛み合わない会話は二人のすれ違いを大きくしていくだけだった。 しかし会話を経るにつれ、ブラフォードははっきりと理解した。目の前のタルカスは生前のタルカスそのものだ。どうやったかはわからないが、タルカスはディオに生き返らされることなく、現世に舞い戻ったようだった。 現状を把握できないままのタルカスを尻目に彼は大きくため息を吐く。そして嫌悪感を込めた目で、かつての盟友を睨みつけた。 「タルカス、貴様……なんという恥晒しッッッ 生前忠義を誓ったはずのメアリー女王に後足で泥をかぶせ、こんな小娘相手に尻尾を振るとはッ……! 見損なったぞッ! 共に命を投げ出し、死を賭してまで義を貫いたと思っていたが……恥知らずだッ! この裏切り者ッ!」 「ブラフォードよ、聞いてくれ。俺は決してメアリーさまを裏切ったわけではない。 考えてみてくれ。こんな殺し合いで、こんな年端もいかない少女を殺して王女は喜ぶか?戦も知らない子供を嬲り殺して彼女は笑ってくれるのか? 違うだろッ! 王女は慈愛に溢れていた。王女は守ることをいつも第一とされていた。 そんな彼女のために……殺すことが忠義だといのならば、貴様こそ、裏切り者だッ ブラフォードッ!」 「ならば貴様は否定するのかッ 彼女のためなら死を賭さない、誇りすらいらない、そう誓って我々は首を差し出したはずだというのにッ 王女を悲しませるから、王女を苦しませるから。情けなしッ 鼻たれ小僧は慰められたいだけかッ 貴様の今のその態度、王女にすら、尻尾を振りご機嫌伺いかッ」 「貴様ァ、王女だけでなく我が誇りすら愚弄する気かッ」 「駄犬になり下がった貴様の誇りなんぞ、愚弄する価値もないわッ!」 売り言葉に買い言葉、かつて共に戦った二人が醜い口争いを繰り広げていた。 見下すブラフォード、訳もわからず馬鹿にされるタルカス。元々血の気の多い戦士同士だ、もはや衝突は必至。 どちらがともなく武器をとれば、あるいは琴線に触れるような言葉をひとつ吐けば、戦いはすぐにでも始まるだろう。 「タルカス……」 あるいはスミレがいなかったならば、戦いは既に始まっていただろう。 血の雨が降り、理由もわからず、誇りも何もない、ただの野蛮な殺し合いが。 服の裾を引っ張られる感覚にタルカスは視線を下ろした。見ると長い間、黙り俯いていた少女が顔をあげていた。 唇を噛みしめ、キッと強い視線でタルカスを睨みつける。微かに灯った光が反射し、瞳の中で星が輝いていた。 怒りがまるで潮を引くように消え去るのをタルカスは感じた。何も言わなくても、スミレが悲しんでいる事がタルカスには理解できたのだ。 そして同時に彼女には覚悟があった。戦いは避けられない、だからタルカスに全てを任せ、彼を戦場に送りだそうという覚悟が。 何もできない無力感にスミレの小さな拳が震えた。本当のことを言えば彼女だって悔しい。 彼女がどれだけ願っても、ブラフォードが鞘を収めてくれるとは思えない。自分のせいで二人が戦わなければいけないと思うと胸が締め付けられる。 スミレは自分が情けない。優しく、自分を守ってくれるタルカス。自分はそんな彼の足を引っ張るばかりなのだ。 それでもスミレは上を見る。全てを丸ごと飲み込んで、それだからこそ彼女はタルカスの背中を押す。 何も言わずに、二人は見つめ合う。視線を合わせるためにしゃがんだタルカスの頭をスミレが優しく撫でた。 そして彼女は言う。 「シンガポールホテルで待ってるから!」 とびっきりの笑顔を見せるとカバンを背負いなおし、彼女は歩き出す。 最後に一度だけ心配そうな表情でタルカスを見つめ、そして今度は振り返ることなく、彼女は闇へと溶け去って行った。 「……下らぬ」 「……それが貴様の想いなのか、ブラフォード」 スミレの姿が見えなくなるまで眺めていたタルカスに投げかけられた言葉。背中越しにその言葉を聞いた彼は振り返り、戦友の目を覗きこんだ。 不思議なほど、頭の中が静まっていた。侮蔑をこめたブラフォードの視線に激昂することもなかった。怒りに狂っていたついさっきまでの事がうそのようだった。 それどころか、タルカスの中で湧き上がった思いは悲しみ。 戦友とこんな形で戦いたくはなかった。戦友のそんな言葉を聞きたくなかった。 お前は何も感じなかったのか……? スミレの、あの気高き魂を前にしても、お前の想いは変わらなかったのか……? 年端もいかぬ少女なのだぞ……。恐怖もあるはずだ。無力感も、悔しさも、悲しみも! あの小さな体で、スミレは全てを受け止めていたのだぞッ だというのに、それでもスミレはあんなにも誇り高く! 決して下を向くことなく、俺を信じ、頼り、任せてくれた! ああ、そうだ! 彼女は、スミレは……それでも笑ってくれたのだ! この俺に、この戦士に! お前にもわかるはずだ、彼女の気丈さ、健気さ! そして彼女のその優しさが! タルカスはそう思った。だが決して口にはしなかった。 ブラフォードの凍てつくような眼を見て、彼は黙って槍を構えなおした。 あんたの目がとても優しかったから、そうスミレが言ってくれた目を悲しみと決意の色に染めながら。 一時の静寂の後、二人の男が動いたのはまさに同時。 金槌を振りかぶるブラフォード。鉄槍をつきだすタルカス。 戦いが始まった。 ◆ 金属音に紛れ、時折響く鈍い破壊音。鉄鎚がコンクリートを砕く音、鉄槍が金属を穿つ音は静まり返った町によく響いた。 タルカスの槍が纏わりつく髪の毛を切り裂いた。気合い一閃、大声をあげた巨体がブラフォードに突っ込んでいく。 ブラフォードはこれに対して鉄鎚を正面に構え、受け止める。同時に上下左右、四方向から黒い濁流の襲撃。 髪の毛に締めあげられた身体は速度を落とし、手に持った槍も標的を捕えることなくその場で止まる。 もう一度槍振り上げ、拘束を解く。だがその僅かな時間はブラフォードにとっては充分すぎる時間。今度は一転、防戦に入ったタルカス。襲いかかる金槌をさばくことに集中していく。 つばぜり合い、ぶつかり合い。大きく振り上げた鉄鎚が空ぶったのを見たタルカスは鋭い蹴りを放った。 咄嗟に身体を捻ったブラフォード、それでも蹴りの衝撃は吸収しきれず、吹き飛ばされる。同時にタルカスは詰まっていた距離を大きく取り直した。 道路で一回転、受け身を取ったブラフォードが憎々しげに表情を歪ませた。鉄鎚を持った手に血管が浮かび上がり、髪の毛がゾワリと震えた。 タルカスは考える。息詰まるような攻防の中、張っていた神経をほんの少しだけ緩め、汗ばむ手で槍を握りなおす。 正直に言うと、タルカスはこの戦いの終わりが見えなかった。互いに近距離戦を得意としている二人であったが、決め手に欠く攻防が長い間続いていた。 ブラフォードは鉄鎚をもてあましていた。武器を振るうことに支障はない。しかし一流の戦士を相手にした時、その鉄鎚はあまりに重すぎた。速度の出ない武器を前に、なかなか会心の一撃を放てずにいる。 その上相手にしているのは巨漢、怪力のタルカス。髪の毛を容易くちぎり飛ばすその力に、なかなか自分のペースに持ち込めない。 一方でタルカスは纏わりつく髪の毛を前に、最後の詰めが詰め切れない。髪の毛と鉄鎚の多方向攻撃、ブラフォードの間合いに居続けてはあっと言う間に致命傷を喰らってしまう。 自然と攻めては引き、引いては攻めの繰り返しとなる。しかし屍生人となったブラフォードは疲れも見せず、多少の傷はものともしない。 戦いは止まってくれない。考えに沈んでいたタルカス目掛け、勢いをつけたブラフォードが突っ込んでくるッ! 迫りくるブラフォードの突撃をかわし、棒の部分で相手の顔を狙ってはたく。髪の毛によって防がれたが、体重を乗せ、そのまま槍を振り切った。 タルカスは考える。相手の繰り出す鉄鎚を避け、髪の毛をちぎり、地面を転がりながら考える。この戦いをどう終わらせるのか、ひたすら彼は考え続けた。 短い時間で交わされた会話を頼りに考えてみた。 ブラフォードは怨霊そのものだ。呪いを抱いたまま死に、呪いによって生かされ続けているブラフォード。 それはスミレに会うことがなかったタルカス自身の姿。タルカスはブラフォードと似ている。ブラフォードはもう一人の自分自身だ。 救いたい、スミレが自分の心を解き放ってくれた様に、かつての戦友を解き放ちたい。 呪詛の言葉をつぶやき、髪の毛を振り乱し、壊れた殺戮マシーンのように鉄鎚を振るう。 それはブラフォードの生きざまではないはずだ。気高い武人、それがブラフォードという男のはずだ。 取り戻してほしい。誇りを、そして心を。 最後に見たスミレの姿を思い出す。彼女の笑顔を思い出すと勇気がわいてくる。 「俺は……スミレのため、守るべきもののため…………!」 「BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」 胴体を粉砕せんと横方向に振るわれた鉄鎚。鉄槍で受け止め、タルカスは吠えた。 「負けるわけにはいかんのだッ!」 【C-4 中央/一日目 黎明】 【タルカス】 [能力] 黄金の意志、騎士道精神) [時間軸] 刑台で何発も斧を受け絶命する少し前 [状態] 疲労(小) [装備] ジョースター家の甲冑の鉄槍 [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針:スミレを命に変えても守る。そして主催者を倒す。 1:ブラフォードの心を取り戻す。 2:誇りと心を取り戻してくれたスミレに感謝。必ず守って見せる。 3:戦いが終わればシンガポールホテルへ向かう。 【ブラフォード】 [能力] 屍生人(ゾンビ) [時間軸] ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前 [状態] 腹部に貫通痕(戦闘には支障なし) [装備] 大型スレッジ・ハンマー [道具] 地図 [思考・状況] 基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す 0:タルカスを倒す。 1:強者との戦いを楽しむ。 2:ジョナサン・ジョースターと決着を着ける。 3:女子供といえど願いの為には殺す。 ◆ ポタリ、ポタリ……。メトロノームのように一定に刻まれる音は融けだした氷柱が生んだ水滴音だろうか。 それとも……と、スミレは地面に横たわったまま視線を自分の体に向ける。真っ赤に染まった身体のどこからか血が流れ落ちている音かもしれない。 視界にうつるのはキラキラと輝く巨大な氷のオブジェ、真っ二つに折れた棒、手痛い反撃を喰らった鳥、そして……血の海に横たわる自分。 「ざ、まぁ……みろ」 よろよろと、今にも墜落しかねない鳥の後ろ姿に向けて、ニヤリと笑ってやる。 追いかけて行って焦らせてやろうかとも思ったが、もはや自分が立ち上がることすらできなくなっていた事に気づき、スミレはそうするのを諦めた。 片足は氷におおわれ、体のあちこちが、標本箱に飾られている蝶のように、氷柱で地面に縫い付けられている。 考えてみればそれも当然かな、とどこか他人事のように納得した。 無理矢理喋ったせいか、喉元に何かがこみ上げてくる。体全身を震わせるように咳き込み、口から飛び出してきた真っ赤な液体を眺める。 もう永くはないんだ……そうひとりごちることすらできず、スミレは全身から力をゆっくりと抜いた。背中に広がる自分の血が暖かく、心地よい。眠るように目をつぶった。 タルカスとの約束が守れそうにもない、そう考えると少しだけ悲しい。 今も彼は戦っているのではないだろうか。そうであるならば、せめて彼が戦っている間は、自分も戦っていたかった。 全力を尽くすことは確かにできた。ホテルに着く直前に、急に宙より降りそそいできた氷の雨、そして鋭い爪で襲いかかってきた一匹の隼。 無駄な抵抗ではなかった。蹂躙され、いたぶられ、それでも油断しているクソッタレチキン野郎に思いきり、棒での一振りを叩きこめたのだ。 それが結果的にヤツの逆鱗に触れてしまったようだが、それでもスミレはちょっぴり自分自身が誇らしげだった。 鳥公が人間様を舐めてんじゃねーぜッ てめェはな、ただの猛禽類なんだよ、このダボが! そんな想いで一発叩きこめたときはスカッとした。あの鳥野郎はさぞかし頭にきただろう。自分より遥かに劣る人間様に手痛いしっぺ返しを食らったのだから。 そう考えるとスミレは愉快だった。 段々と身体を動かすこともできなくなってきた。なんとか力を振り絞って、ぼさぼさになっていた髪の毛を、震える手で整える。何でもないことがえらく億劫で、けだるい。 寒い、凍ってしまいそうだ。指先の感覚がなくなっていく。体全身から温度が逃げて行く。 血の海の中で身体を丸め、横向きで膝を抱えるような姿勢をとった。少しでも自分の体を温めたい、そう思ったスミレは弱弱しく、滑る足を撫でてやる。 寂しい。このまま死んでいくのが怖かった。 誰にも看取られず、一人ぼっちで逝くのは寂しいことだった。スミレが想像した以上に死ぬということは孤独だった。 惨めさと後悔から彼女の目に涙が溢れてきた。わなわなとふるえる口から出る息は白く曇り、もはや言葉を吐くのは不可能なほどに、彼女の身体は弱っていく。 ポタリ、ポタリ……。涙が頬を伝い、綺麗な肌に一本の線を描いていく。次々と零れ落ちて行く水滴が真っ赤な波紋を作っていた。 もっと生きていたかった。もっとたくさんのことを経験したかった。もっと、もっと、もっと……。 彼女の願いの数だけ、雫がおちていく。無数とも思える数の願望が、浮かび上がり、また滑り落ちる。何度も、何度も、何度も……。 「育、朗……アンタがいれ、ばなァ…………」 ―――寂しくなんかないのに。 震えるように吐き出された言葉。小さく響いていた水滴音が止まる。揺れ動いていた深紅の水面が、動くのをやめた。 やがて訪れた静寂。一度だけ開かれた瞳がゆっくりと閉じられた拍子に、最期の涙が落ちていく。 そしてそれっきり、音はやみ、少女は動かなくなった。 【スミレ 死亡】 【残り 105人】 【C-4 シンガポールホテル周辺/一日目 黎明】 【ペット・ショップ】 [スタンド] 『ホルス神』 [時間軸] 本編で登場する前 [状態] 全身ダメージ(中) [装備] なし [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針:サーチ&デストロイ 1.とりあえず体力の回復を図る 2.自分を痛めつけた女(空条徐倫)に復讐 3.DIOとその側近以外の参加者を襲う [備考] ※ペット・ショップの状態は飛ぶことはできるが、本来のような速さはない程度のけがを負っている状態です。 ※シンガポールホテル付近にスミレの死体が転がっています。近くにデイパック、ジョースター家の甲冑の鉄兜、折れた棒、溶けかけの氷柱が放置されています。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 038 朽ち果てるその前に ブラフォード 093 全て遠き理想郷 033 Fate/stay night タルカス 093 全て遠き理想郷 012 見知らぬオフィーリア ペット・ショップ 074 どうぶつ奇想天外ッ! 033 Fate/stay night スミレ GAME OVER
https://w.atwiki.jp/jojotoho_row/pages/33.html
傍で穏やかに川が流れる、E-3の平原。 周辺から薄暗く見えるものは蓮の浮かぶ小さな池、そしてぽつんと畔に存在する小さな祠のみ。 川の流れる音に紛れるように、カチャリと金属音が静かに響き渡る。 長い鞘から、ゆっくりと剣を引き抜かれる。 鞘から引き抜かれた剣から、銀色に鈍く光る刃が露となる。 これが、私に支給された『武器』。 「LUCK PLUCKの剣」。大柄な西洋剣が白く細い手に握り締められる。 殺し合いにおける自身の相棒となるであろう。 そう。ここから先、戦い抜く為の…刃。 されど、他者を殺すのは自分の意思。 手に握り締められた剣は殺人の為の『手段』―――『道具』に過ぎない。 この剣で誰かを斬り捨てることは、私自身の意思が決めることだ。 殺すのは己の殺意。誰かをこの手で殺めるのは、己の殺意。 剣をその手に握りしめ、立ち尽くす少女―――毘沙門天の化身「寅丸星」。 凛々しい表情とは裏腹に、瞳には殺意と決意を宿す。 彼女は、覚悟を決めていた。 自らが住まう命蓮寺の僧侶であり、同時に自身を仏教の道へと誘ってくれた師のような存在―――聖白蓮を護る覚悟を。 「聖、私は…貴女に許しを乞うつもりはありません」 剣を両手に握り締め、彼女は真剣な表情で呟く。 その瞳に宿るものは―――覚悟の表明。 「貴女だけは、もう…喪いたくない」 ―――そう。あの時と同じように。 聖が封印されるのを『見殺し』にした時と同じように。 彼女が再び傍から喪われることなど…あってはならない。 私達が巻き込まれているのは「たった一人しか生き残れない殺し合い」。 主催者は…数多の妖怪の、異変解決を生業とする巫女の、八百万の神々の生殺与奪を平然と握れる程の存在。 死から程遠い我々に対し、『死』を刷り込ませた強大な存在。 最初の会場で、見せしめに秋の神が殺された。あの主催者は、神々をも簡単に殺すことが出来るのだ。 あの男達は、神をも超える『化物』。 それほどの力を見せつけられた以上、恐らくは多くの参加者がこの殺し合いに乗るだろう。 いや、乗らないとしても…参加者が彼らに反抗することなど、不可能に近い。 私は、怖い。聖がこの場でも誰かの為に奔走するかもしれないということが。 かつて、人間から裏切られ封印された時のように騙されて。 あるいは凶悪な参加者と相対して、殺されるかもしれない。 聖は誰よりも優しい。―――だからこそ、悪意ある者に利用され…踏み躙られるかもしれない。 そうして再び彼女を…いや、本当の意味で彼女を喪うことが。 どうしようもなく、怖い。 だから私は決意した。―――『汚れ役』を担う覚悟を。 これは自分の意思。聖を護る為、自らの手を血に染めるのは…自分の意思だ。 毘沙門天の化身としてではない。命蓮寺の一員としてでもない。一匹の妖怪…寅丸星としての意思。 宝塔や毘沙門天の加護など、今は無い。だが…それでも、やらなくてはならない。 「私が、全ての罪を担います… 聖。貴女だけは、生きて下さい」 ―――私は聖を護る為に、他の参加者を殺す。 彼女だけは、二度と喪いたくない。せめて彼女だけは、生きていてほしい。 そして…罪を背負うのは、私一人でいい。これは、私の私闘。 聖の為ならば…私は、『魔王』のような存在にだってなってみせる。 彼女は、ゆっくりと背後を振り返る。 他者がこちらへと近づいてくる『気配』を感じ取ったのだ。 その歩行音はどこか地響きの如く大きい。相当の体格の持ち主と見受けられる。 目を細めつつ、星は剣を握り締めて構えていた…。 「―――ほう、何かと思えば…小娘か」 星が睨む草原の方向から歩いて姿を現したのは、まるで山のような巨躯を持つ大男。 全身に甲冑を身に纏い、その姿は騎士を連想させる。 瞳に宿るのは『殺意』。…星はすぐに理解出来た。この男は、殺し合いに乗っている。 恐らく、人間ですらない。そう思える程の異常な気配を醸し出していたのだ。 男は右手に見覚えのあるアンカーを握り締めながら、剣を構える星を見下ろしてきた… 「………。」 「だが、小娘にしては中々の『殺意』を持っている…それにその剣は我が盟友ブラフォードの物ではないか。 クク…楽しみ甲斐がありそうだ」 剣を握り締めながら無言を貫き通す星とは対照的に、男は不敵な笑みを浮かべながら呟く。 どこか興味を抱いているかのような、愉悦を求めているような…そんな様子だ。 そして右手に握り締めたアンカーを構えるような体勢を取り。 「さて、本番と行こうじゃないか」 「…………。」 「――我が名はタルカス。『貴様ら』を、殺し尽くす者だ」 男は、『タルカス』は名乗りを上げる。 その様はまさに中世に名を馳せる騎士だ。 だが、その表情に浮かべるのは邪悪とも取れる笑み。 彼は残忍な殺戮のエキスパート。―――目的は『皆殺し』だ。 DIO以外の全ての参加者を血祭りに上げること。それがタルカスの方針。 『たった一人』の為に他の『全て』を殺す。ある意味では、星と同じ。 しかし、その胸に抱くモノは違う。タルカスは、殺戮を『楽しんでいた』。 心より殺し合いを楽しもうと―――期待を抱いていたのだ。 そんな彼の感情に星が気付いているのかは定かではない。 名乗りを上げたタルカスを見上げつつ…こちらも、言葉を発した。 「…私は、寅丸星」 ブン、と握り締めていた剣を下ろすように構え。 「ただの『妖怪』だ」 ―――星は一言、そう呟いた。 そして疾風の如き素早さで、勢いよく地を蹴る。 それは戦いの火蓋が切って落とされた、戦場の合図。 彼女は駆け抜けた。黒騎士の『LUCK PLUCKの剣』を構え―――タルカスへと向かっていった。 ◆◆◆◆◆◆ さて… この私に与えられた支給品は、一体何だ? …ふむ…これは、『銃』…か。 型は少し違うが、我々を監視していた軍人共が使っていたのを見たことがある。 数千年前にはこのような道具は無かったからな…記憶に残っている。 人類もほんの少しは進歩している、と言うことなのだろうな。 尤も、大した威力でもない恐るるに足りぬ長物であったが。 解析してみた限り…長身の形状、それにこの構造…成る程、遠距離射撃に特化した銃器ということか。 弓矢を超える射程距離を持つ飛び道具。確かに『厄介』ではある。 だが、私からすれば玩具のような物だ。 こんなもの―――必要は無い。 …………ふむ。 分解は容易いな。やはり機械的なものは構造が解りやすい。 所詮はガラクタだ。弾丸を発射する道具など私には不要だ。 だが… 『弾丸』にはまだ使い道がある、な。 長距離射撃を目的としている弾丸だ。遠方まで弾丸を届かせるとなれば、威力は信頼出来るはず。 人間程度なら恐らく容易く仕留められるだろう。 利用するに越したことは無い。 ◆◆◆◆◆◆ 毘沙門天の化身。 屍生人の騎士。 二人の『人ならざるもの』が、闘いを繰り広げていた。 始まりから、暫しの時間が経っていた頃か――― ――鋭利な刃と重々しい鉄塊が打ち合う音が響き渡る。 星のLUCK PLUCKの剣とタルカスの握るアンカーが衝突したのだ。 周囲に強大な波紋が広がるかのような重圧。 勢いと力を乗せた、二人の重い一撃がぶつかり合った――。 「―――ッ!」 ――競り合いで大きく仰け反ったのは星の方だった。 単純なパワーの差、そして技量の差で彼女は打ち負けた。 生前より騎士として戦場を駆け抜けてきたタルカス。 「88の輝輪」の試練を乗り越えた勇者の一人である、百戦錬磨の騎士だ。 対して星は、宝塔の加護による能力増強で大きな力を発揮する。 しかし…今の星の手元に、その宝塔は無い。 「そォらァァァッ――――!!!」 星の耳に入ったのは…風を斬る音! そう、間髪入れずに振り下ろされるアンカーが―――星に迫っていた! 星はそれをギリギリで横に跳んで回避し、アンカーはそのまま地面に叩き付けられた。 ガァン、と鈍い破壊音が響き渡る。 アンカーの叩き込まれた地面に入ったのは大きな亀裂。 巨大な鉄塊を落下させたような凄まじい衝撃であることは、一目で分かる。 ―――無論、それを暢気に眺めている暇など星にはない。 「はっ―――!」 アンカーを回避した星の手から放たれたのは、輝く無数の弾幕。 幻想郷の住民が得意とする『霊力の弾丸』。 星も例外ではない。宝塔を持たぬ状態とはいえ、単独の戦闘自体は可能だ。 彼女は回避した直後に距離をとるように後方へ下がりながら弾幕を放ったのだ! 幾つもに連なる弾丸は、攻撃を放ち終えた直後のタルカスに迫る―――! しかし、その攻撃は彼の前では意味を成さなかった。 「―――失せよォッ!!」 ――タルカスは、地面にめり込ませていたアンカーを『力づく』で引き抜いたッ! そのまま引き抜いた勢いを乗せたアンカーを振るい、強引に弾幕を散らしたのだ! 少ない霊力で形成した弾幕は、いとも容易く消滅させられる。 タルカスの強靭なパワーはそれを可能とした。 「どうした、小娘!?貴様の力はそんなものかッ…!」 ――タルカスが言葉を吐き出すと同時に、獣のような脚で地を蹴る! 地響きのような音と共にタルカスは星に迫る! 目の前の敵を仕留めるべく、巨躯の騎士は躊躇い無く迫るッ! 星はギリ、と歯軋りをしながら…タルカスを睨んでいた。 このタルカスという男は―――予想以上に強い。 見た目通りの腕力だけではない。単純な技量も相当に高い。 あのアンカーを手足のように自在に扱っている。 タルカスが百戦錬磨の戦士だということは、直接闘って『理解』することが出来た! どうやらこの場には、自分も知らないような実力者が存在するようだ。 そう、目の前のタルカスのような…殺戮を望む『実力者』が! ならば尚更、私は負けるわけにはいかない。 勝ち目がどこまであるかは解らない。だが、やるしかない―――! 「まだまだ、こんなものじゃない―――ッ!」 剣を握り締め、寅丸星は立ち上がる! こんな所では終わらない!聖を護る為に闘うと誓った以上―――ここで死ぬつもりなど無い! 雄叫びのような声を上げながら、彼女は構える。 そう、目の前のタルカスを全力で仕留める! 奴は必ず危険となる。ならば、今此処で…あらゆる手段を使ってでも! 迫り来るあの騎士を、この手で『殺す』――――! 「捜符、」 その直後のことである。 聞き覚えのある声が、どこからか聞こえてきた。 ――え、と星は唐突に耳に入った声に驚きを隠せずにそちらの方を向く。 そう、それは彼女にとっても聞き覚えのある声。 忘れることなど決してない、一人の妖怪の少女の声。 当然のことだ。この声の主は、彼女にとって縁のある人物なのだから。 ―――そして、それは迫り来るタルカスもその声に気付いた瞬間のことだった。 「――――『レアメタルディレクター』!!」 側面から突如タルカスに向けて放たれたのは―――無数の氷結弾! まるで鋭い氷柱のような無数の弾幕が次々と放たれてくる! 怒濤の勢いで放たれるそれは、獣の如しタルカスの突進を大きく阻む! 防御の体勢を取らざるを得ない程の攻撃の勢いが、タルカスの行動を阻害したのだ――! 「ぬぅっ…!?」 タルカスは突然の奇襲に堪らず仰け反り、防御をして何とか防ぎつつ後方に下がる。 幾ら百戦錬磨の騎士と言えど、唐突な乱入にすぐさま対処は出来なかった。 そう―――突然の新手の出現。彼は驚きを隠せず、舌打ちをしながら攻撃が放たれた方角を向いた。 一体何者だ…!?この小娘のような弾丸を放つ術を使ってきた者は――― 「…おい、ご主人」 ひょこっと星の傍に近づいていたのは。 ―――『鼠のような大きな耳』を持つ、一人の少女。 少女である星よりも更に小さい、子供のように小柄な体格だ。 星は、目を丸くするように彼女を見ていた。驚きを隠せぬ様子で、彼女を見ていた。 タルカスに向けてスペルを放ち、星を助けたのは――― 「大丈夫かい?…どうやら、厄介なことになってるようだな」 「―――ナズーリン…」 ―――それは、毘沙門天の化身である寅丸星の部下であり…監視役。 彼女と同じ、命蓮寺の一員で毘沙門天の弟子である妖怪。 小さな小さな賢将。そう。彼女の名は、『ナズーリン』。 ◆◆◆◆◆◆ しかし、ここは一体何処だというのだ? 周囲一体に見えるのは精々だだっ広い草原くらいだ。 今まで見てきたような大規模な都市らしきものは一切見当たらない。 文明も行き届いていない程の辺境の土地で『殺し合い』が開催されているのか。 それとも、この会場自体が『殺し合いの為に用意された盤上』に過ぎないのか。 此処が一体何処なのかは…会場を動いて、少しばかり調査してみる必要がありそうだな。 …あの太田順也に、荒木飛呂彦という男は一体何を企んでいるのだろうか? 総勢90名もの人間をこの地に呼び寄せ、殺し合いをさせる。優勝者には褒美がある、と… 奴らの意図が読めない。わざわざこれ程までの人数を呼び寄せて殺し合いを開き、何の益があると言うのだ? 殺し合い自体に何らかの意味があるのか、あるいは単なる余興に過ぎないのか… ふむ、こればかりはまだ解らないな…あの二人について知っている参加者が居ればいいが。 それに気になるのはもう一つ。名簿には死者の名前が記載されていたのだ。 彼らは確かに『死んだはず』。―――なのに何故、名簿に名が載っている? まさか死者蘇生の類い? それほどまでの力をあの主催者共は手にしていると言うのか? …推測すれば推測するだけ、謎が浮かび上がってくる。埒が明かないな…。 暫くは保留としよう。そもそも、彼らが本当に蘇っているのかも疑わしい。 まずはこの会場の探索からだ。生きているかどうか…それはこの目で確かめる他ない。 そして――――『虫けら共の始末』も、行わなければな。 …それにしても、何かが聞こえてくる。 これは戦闘の音か。 どうやら…あちらの方角が、少々『騒がしい』ようだな。 ◆◆◆◆◆◆ 腰に手を当てながら、ナズーリンは星を横目で見る。 タルカスへの警戒を解かずに、いつでも交戦に入れる体勢だ。 そんなナズーリンを、星はぽかんとしたように見ていた… 「まだ開始からさほど時間も経っていないというのに、既に殺し合いが始まっているとはね…」 「ナズーリン…、貴女は…」 「―――解っている、ご主人。私は別に殺し合いに乗るつもりはない。 あの荒木に太田とか言うのに従う気なんて、更々無いさ」 星の言葉を察するようにナズーリンは先に言葉を発する。 彼女は当然の如く、きっぱりと言ってのけた。「殺し合いに乗るつもりは無い」と。 その言葉を聞いた星の心に渦巻くのは…罪の意識。 罪を背負う覚悟は出来ている。―――だが、こうして面と向かって部下と会ってしまった。 そしてその部下は自分とは違い、主催に抗う決意をしている。 ――私は、『聖を護る為に他者を殺すことを決意した』。 殺し合いに乗り、聖一人を生き残らせる為に。私は、この手を血に染める決意を固めていた。 それはある意味で…主催に立ち向かう自身の部下を裏切るような行為でもある。 覚悟はとうに決めているはずだった。だが、星の心に沸き上がっていたのは…罪悪感のような感情。 …私は、ナズーリンに何と言えばいいのだろうか。 彼女に私の方針を知られたら、もはや主人ではないと失望されるのかもしれない。 恐怖に屈した臆病者と軽蔑されるのかもしれない。 …でも。 それでも、私に手を差し伸べてくれた聖を護る為に。 私は――――――― 「と、ご主人。話は後みたいだ」 星の思考をよそに、ナズーリンはさっと身構える。 キッと睨むような彼女の視線に先にいるのは―――巨躯の騎士。 その身から強大な殺気を放つ、凶暴な殺戮のエリート。 弾幕に怯んでいたタルカスが、体勢を立て直して星とナズーリンを見据えたのだ。 「…よもや仲間が居たとはな、小娘…!だが、まぁいい…数が増えた所で変わらんわ…!」 右手のアンカーを引き摺るように持ち上げ、忌々しげに言葉を吐き捨てる。 先程の弾幕を受けたとはいえ…その身には殆どダメージを受けている様子はない。 小さな裂傷を身体の至る所に負っているが、全く消耗を感じさせない。 威風堂々と、猛々しく。彼は力強く、武器を構えていた―――! 「……、」 「…来るぞ、ご主人!」 すぐさま身構え、ナズーリンは星に向けて声を発する。 ナズーリンを見ていた星も、タルカスの行動に気付き急いでその手の剣を握り締める。 そしてタルカスは、アンカーを握り締め―――強靭な筋肉をバネに、地面を凄まじい勢いで蹴った。 まるで戦車のように大地を震わせ、突撃を開始する――! 「纏めて貴様らの生き血を喰らい尽くしてくれるわァァァーーーーーッ!!!!!!!」 至近距離まで接近してきたタルカスが、アンカーを横に薙ぎ払うように振るう! 強烈な暴風の如し勢いと共に、二人に巨大な鉄塊が迫る。 星とナズーリンは咄嗟に左右に跳んで回避し、ナズーリンが空中で両手を構える―― 「―――そらッ!」 跳躍から落下するナズーリンの手から放たれたのは無数の弾幕。 牽制程度に霊力を込めて放たれたもの。当然の如くタルカスにはアンカーで容易く防がれるが――― 地面に着地した星が、その隙を見逃さなかった! そう。剣を握り締めた星が、アンカーで弾幕を防ぐタルカスに接近していたのだ! 獣の如き眼光で、星は剣を振るう―――! 「はァァァァーーーーッ!!!!」 「ぬ、うッ…!」 ―――タルカスの左脚が、剣の刃によって切り裂かれる。 勢いよく鮮血を吹き出し、負傷により一瞬怯むも――― 屍生人であり、かつての英雄であるタルカスはその程度で動きを止めることはなかった。 直後のこと。 タルカスが、弾幕を防いでいた『アンカー』を振るった。 その身に弾幕を次々と喰らいながらも、力づくでアンカーで薙ぎ払い――― 「―――ぐ、あァッ…!?」 アンカーが、星の身を勢いよく吹き飛ばした。 剣による一撃を叩き込んだ隙を見て、タルカスは弾幕への防御を捨てて攻撃しにかかったのだ。 元より頑丈な肉体に加え、屍生人と化したことにより更なる肉体の強度を得ているタルカス。 弾幕や剣の一撃を、容易く持ちこたえ―――星にカウンターを叩き込んだ! 「ご主人っ…!!」 地面に着地したナズーリンが、吹き飛ばされた星に向かって叫ぶ。 だが、タルカスは間髪入れずに右腕のアンカーを構えていた―――! ナズーリンはハッとしたように、正面のタルカスの方へと向いた。 「クハハハハハハッ!!!余所見している暇があると思ったかッ―――!?」 ナズーリンの小さな身体目掛け、再びアンカーが振り下ろされる――! 避けようとするも、星が吹き飛ばされそちらに注意が引かれてしまったことにより…彼女は『一手』遅れた。 回避が、間に合わない―――! 振り下ろされるアンカーが、ナズーリンの身に叩き込まれようとした直前。 ―――タルカスが、左目を抑えて転倒した。 断末魔のような絶叫を上げ、左目から出血し――仰向けに倒れ込んだ。 突然の出来事に、ナズーリンはぽかんとしたような表情を浮かべる。 倒れ込むタルカスの左目に異変が起こっていた。 いや、異変なんてものではない。直接的な攻撃。 ―――LUCK PLUCKの剣が、左目に突き刺さっていたのだ。 幾ら強靭な肉体を持つタルカスと言えど、目を貫かれればひとたまりも無い。 その刃が脳の近くにまで達すれば、尚更。 「はぁっ―――、はぁっ――――……」 先程吹き飛ばされ、転倒していた星が腹部を抑えながらタルカスの方を見ていた。 ナズーリンが隙を突かれて攻撃を喰らいそうになった直前、LUCK PLUCKの剣を咄嗟に投げた。 狙いは当然、タルカスに向けて。 投げられた剣は彼の左目に突き刺さり、行動を阻害することに成功したのだ。 「…ご主人、」 「―――ナズーリン、まだです!」 星に助けられたことに気付いたナズーリンは言葉を発しようとするも、星はすぐに声を上げた。 そう、悶え苦しみながらも―――タルカスがまだ生きている。 そのことに気付き、すぐさまナズーリンに伝えたのだ。 ナズーリンは咄嗟にタルカスの方を向き、彼と距離を取るように後ろに下がった。 左目に突き刺さった剣を強引に引き抜いたタルカスが―――動いた! 「―――URRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!」 咆哮を上げながら、憤怒のままに星の方へと突撃する! まさに怪物の如き、圧倒的なまでの殺意を身に纏い。 先程までとは比べ物にならない暴風のような勢いで―――迫り来る! 星は身構える。迫り来る『怪物』を前に、霊力を高める。 「―――寅符」 星は―――その身に霊力を身に纏い、球体のような姿と化し。 「『ハングリータイガー』ッ――――!!!」 そして、七つの大型の弾幕と共に―――タルカス目掛け突撃する! その姿は、飢えた獣の如し。身を投げ出した人間に喰らいつく、獣の如し。 毘沙門天の化身としてではなく、一人の妖怪としての矜持。 目の前の化物目掛け、突撃した―――!! 「ぬ、おおおおおォォォォォォーーーーーーッ!!!!!」 タルカスは、真正面から星の突撃を受け止める! 決して一歩も退かぬ勢いで、アンカーで星と弾幕を受け止めるッ! 両腕の力を最大限に込め、押し勝とうとする―――! 星も同じだ。このままタルカスのガードを押し抜けようと、渾身の力を込めている! 互いに一歩も――動けぬ状況。 一歩も退けぬ、そんな状況。 ―――主人の生み出した隙を、ナズーリンは見逃さなかった。 「ご主人、感謝するよ」 咄嗟に懐から取り出したのは――一枚の紙。 支給品を封じ込めている、エニグマの紙。 そう、ナズーリンは勢いよくその紙を『開いたのだ』。 飛び出すのは、一つの支給品。 それはもはや『幻想の道具』とすら言えるかも怪しい、近代的な武装。 河童の技術力が生み出した、強力な重火器。 ―――もはや兵器と言っても差し支えのない、暴力的な火砲! 「――――!?」 タルカスは気付いた。 ナズーリンが何かを取り出し、構えたことに! だが―――動くことは出来ない。 防御体勢を取る事も出来ない!対処する事も出来ない! 星との競り合いにより、動きを封じられているのだから―――! 「―――終わりだ」 ――――ナズーリンの支給品『スーパースコープ3D』より、砲弾が放たれる。 狙いは当然、タルカス目掛けて。 近代兵器と比類しても遜色のない火力が―――タルカスに襲いかかる。 爆炎と同時に、タルカスの身を吹き飛ばした―――― ◆◆◆◆◆◆ 「……終わった…のか…?」 「…多分、そのはずだよ…多分ね」 星とナズーリンは、倒れたタルカスを見ていた。 タルカスは、右腕の部分が大きく焼け焦げており重傷は間違いないだろう。 だが…二人の表情は少し強ばり、警戒の色は抜けていない。 多少の距離は取ったままだ。あのしぶとさは油断出来ないが故に、警戒は怠らない。 もしかすれば、また立ち上がるかもしれない。 そんな予感さえ、した。 だが、星は一先ずナズーリンの方を向く。 「…ナズーリン…此度は、ありがとうございます」 「ご主人?」 「貴女の援護が無ければ、あのタルカスという男に負けていたかもしれませんから」 「……。こちらこそ、だよ。ご主人」 星の言葉と共に、二人は互いに言葉を交わす。 そう、星は改めて礼を言わねばならないと思ったのだ。 ―――今は少なくとも、ナズーリンの援護で助けられた。 そのことに関しては、純粋に感謝を抱いていた。 だからこそ礼を言った。…これから、自分達が相容れるかは別だ。 私はあくまで聖を護るという願いの為に戦うことを決意した。 だが、ナズーリンは殺し合いに反抗すると言っていた。 主従と言えど―――私達の願いは、相反している。 これから、どうするべきなのか。まだ私には―――― 「―――ぐ、うゥッ……………」 ――呻き声が耳に入ってきた。 星とナズーリンは、はっとすぐさま身構える。 そう、倒れていたはずのタルカスが声を上げたのだ。 その瞳からはまだ殺意が抜けていない。まだ敗北を認めていない。 あの一撃を受けて尚―――彼はまだ生きていたのだ。 「―――まだ、…終わらん…ぞ……!」 とはいえ…その身は満身創痍だ。 恐らく無事では済んでいないだろう。トドメを刺すことも、容易いはずだ。 星は真っ直ぐにタルカスを見据えた。 …これから奴を、どうするか。 このまま―――仕留めるべきなのだろう。そう思い、拳をグッと握りしめていた。 ナズーリンも、ゆっくりと口を開く。 「…ご主人、もう奴はそう長くないだろう。惨いことになるが――――」 その時だった。 パァン。 乾いた破裂音のような銃声が、響き渡る。 それは何の脈絡もなく、唐突に訪れた。 「―――え?」 後方から聞こえてきた音に振り返る星。 タルカスも気付いた。唐突に響き渡る銃声に。 刹那。星は唖然と―――驚愕の表情を見せる。 自身が振り返った先。彼女の瞳に写ったもの。 それは――― 鮮血。 まるで潰された果実のように、無数の紅が飛び散る。 タルカスを見据えていた、ナズーリンが。 頭部を撃ち抜かれていた。 ナズーリンの小さな身体が、壊れた人形のように崩れ落ちる。 即死だ。―――ナズーリンの命は、たった一瞬の一撃で奪われた。 「ナズー、リン―――」 星の顔が――絶望の色に染まる。 何が、何が起こったというのか。 どうして…ナズーリンが、倒れているんだ? どうして、ぴくりとも動かない? どうして、また起き上がってくれない? どうして、どうして――――― 今の状況が、理解できなかった。 「何かと思えば…」 ―――低く威圧的な声が、静かに響き渡ってくる。 倒れたナズーリンの後方。距離にして10歩程度離れた位置に立つ、一人の男の影が見えた。 それは逞しい筋肉に覆われた、どこか美しささえ感じる妖艶な男。 そして、その身体から放つのは―――幻想郷の大妖怪にすら匹敵する、圧倒的なプレッシャー。 傍にいるだけで感じ取れる、肌がピリピリするような凄まじい威圧感。 唖然とする星だけではない。タルカスですら、この男に言い様の無い『畏れ』を心中で抱いていた。 あらゆる悪を超越する―――『魔王』が、そこには君臨していた。 その男は、真っ直ぐ前に突き出した指先から硝煙を発しながら―――星と、タルカスを見据える。 「この『カーズ』にとって、雑作もない虫ケラ共か」 フン、とつまらなそうにナズーリンの『死体』を見て…男は、カーズは呟く。 瞬間。星は即座に理解した。 ナズーリンを殺したのは、この男だと。 私の部下の命を奪ったのは、この男だと。 大切な仲間を虫けらのように踏み躙ったのは――――この男だ。 私の中で、何かがぷつりと切れる音がした。 動き出していた。 「―――――貴、様ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!!!!」 まるで慟哭のような咆哮を上げ、星はカーズに向かい―――駆け抜ける。 渦巻くものは、激昂。憎悪。 部下を殺されたことへの、強い怒り―――それが星の身体を動かしていた。 もはや疲労すらも忘れて、全身の筋肉を躍動させる。 激情が、彼女の身を強引に動かしていた―――――!! だが、 ―――パァン。 「な、―――」 再び響き渡る破裂音――銃声。 突撃する星の脇腹が、勢いよく貫かれる。 大きくバランスを崩した星は吐血し――転倒する。 彼女の身を襲ったのは弾丸。先程ナズーリンの命を奪ったものと同じ。 カーズの支給品「ジョンガリ・Aの狙撃銃」の弾薬。 しかし彼は銃など構えていない。行っていた行動は「指を星に向けただけ」。 そう―――彼は狙撃銃の弾丸をその身に『取り込んでいたのだ』。 取り込んだ銃弾を自らの指先に移動させ、放つ。 それは柱の男の中でも最下位の階級の者である「サンタナ」も行っていた攻撃。 彼よりも遥かに上位の存在であるカーズにとって、雑作もなく行えることだった。 「このカスが…」 崩れ落ちた星を見下ろし――その左腕から『刃』を生やす。 カーズの能力『輝彩滑刀の流法』。 あらゆるものを自在に切断する、輝く光の刃。 脇腹を銃撃されて尚何とか立ち上がろうと膝をついた星が、その刃に気付いた時には――― 既に遅かった。 星の目の前に、一瞬のようなスピードでカーズが迫る。 「―――騒ぐじゃあない」 一瞬の交差。 刹那に響く、鋭利に切り裂かれる音。 直後に飛び散ったのは、真紅の鮮血。 そして、焼けるような―――激痛。 「が、ああぁァァァァァァァッ―――――――!!!!?」 ――星の左腕が、『吹き飛んだ』。 悶え苦しみ、叫び声を上げながら星は左腕の切断部を抑え込んで倒れる。 それは輝彩滑刀による瞬時の一閃。 凄まじい切れ味を誇るその一撃が、彼女の左腕の肘から先を切断したのだ。 激痛に悶える星を流し見るカーズの瞳は――冷徹そのもの。 「激情に身を任せ、突撃し…そして返り討ちか。フン、下らん茶番だ」 倒れ込んでいる星に、ゆっくりと…男は近づく。 その腕より光り輝く刃を生やしながら、余裕に不敵な笑みを浮かべる。 どこまでも傲岸に、彼は一歩一歩を踏みしめる。 力の差は歴然だった。―――このカーズという男は、圧倒的な『強者』だったのだから。 疲弊した今の星の命を奪うことなど、容易い。 「一瞬でその命―――刈り取ってやろう」 「が、ァ…ッ……――――」 カーズが、腕を振り翳した。 左腕から生やす刃を―――『輝彩滑刀の流法』を。 転がる星の命を文字通り一瞬で奪う一撃。 それは、星の首に向けて振り下ろされる―――― ―――――だが、その一閃が星の命を奪うことはなかった。 何故ならば。 カーズの身体が、宙を舞っていたからだ。 そう、カーズが『吹き飛ばされていた』。 星が顔を上げた先、その瞳に写ったのは――― 満身創痍の身体を押し、カーズを突進で吹き飛ばしたタルカスの姿だった。 星は、目を丸くして驚愕の表情を浮かべた。 「―――タル…カス……どう、して………」 「はァーッ……はぁー、ッ…………!」 カーズを吹き飛ばしたタルカスの息は荒く、乱れている。 その表情には必死さが現れている。 あれほどの傷を受けながらも、無理矢理立ち上がったのだから。 彼は―――星を助けたのだ。 「勘違い……するな……寅丸星、とやら…!貴様に…肩入れしたのではない…」 「……………。」 「おれは……あのような、男の……思い通りに……事が進むのが―――」 そして、タルカスは―――その右腕に、再びアンカーを握り締める。 「―――気に入らんだけだッ……!!」 タルカスは、アンカーを右手で構え。 その屈強な両足で、猛々しく立って見せる。 鋭い視線で見据えるのは―――ゆっくりと立ち上がったカーズの方向。 これほどまでの傷を負った。もはや自分は満身創痍だろう。 ―――そんなことは解っている。だからどうしたというのだ。 片目が見えぬ。この腕に、胴に焼けるような激痛が走る。 だから、何だと言うのだ。 それがあのような男に屈する理由になど。あのような男におめおめと殺される理由になど―――ならぬ。 あのような男の好きになど、させてたまるか。 「此処は俺が引き受けよう、寅丸星」 「……タルカス、」 「―――あの男は、俺が殺す」 タルカスは、屍生人の騎士は宣言した。 目の前の男を、カーズを―――『柱の男』を、この手で殺すと。 時間稼ぎや身代わりではない。殺してみせると言ってのけたのだ。 ―――駄目だ。タルカス、お前も逃げるべきだ。 星は動揺しつつも、そう言おうとしたが――― 「貴様は早く逃げろッ!!」 「…………っ、」 声を荒らげながらタルカスが凄まじい気迫と共にそう叫ぶ。 星は感じた。タルカスは…本気で闘うつもりだ。 本気で――あの男に、立ち向かうつもりだ! 私は、驚いていた。まさか敵として闘っていた相手に…助けられるとは、思ってなかった。 一瞬、迷いすら抱いていた。だけど―――今の私では、勝つ事も出来ない。 それ理解していた。だから私は、立ち上がった。 すぐさま、その場から走り出したのだ。 私は―――逃げ出した。 ◆◆◆◆◆◆ 草原で相対し合う二人の男。 巨漢の騎士は、先の戦闘で重傷を負いながらもその両足で立っていた。 対する長髪の男は―――余裕の態度で、両腕を組んでいた。傲岸不遜な笑みを浮かべながら。 「…ほう。貴様…屍生人か」 「………………。」 「吸血鬼にも劣るような搾りカスが、この私を殺すだと?」 「………………。」 「それに女子供を逃がし、自らが撃って出るか。成る程成る程、勇ましいことじゃないか」 その直後のこと。 カーズの表情が、冷徹なモノへと―――変わった。 「―――図に乗るのも大概にしろよ、ウジ虫が」 長髪の男―――カーズが、駆け抜けた。 疾風怒濤と表現するに相応しい、圧倒的な瞬発力で走る。 地を駆け抜けながら、その右腕から刃を発現させる。 タルカスは、その男に対し…ある種の恐怖すら感じていた。 それはまるで。獣を前にした羊のような。圧倒的な化物を前にした人間のような。 魂が記憶しているかのような、本能的な畏れ。 だが―――屈するつもりはなかった。口元には、笑みが浮かんでいた。 ああ、やってやるさ。 この目の前の男を、この手で殺してやるさ―――――!! 「『輝彩滑刀の流法』ッ!!」 「う、おおおおおおォォォォォォォォォォォ――――――――――ッ!!!!!!」 雄叫びを上げ、タルカスもその両足で奔った。 右腕にアンカーを握り締めながら。全身の筋肉を躍動させながら。 この一撃で仕留めんばかりの全力を、魂に込めて。 恐怖に屈することなど無い。 強大な恐怖に挑む、騎士としての誇り高き魂が―――その瞳には宿っていた! そして、駆け抜けた二人の男が――― すれ違い様に、ほぼ同時に放った一撃が。 一瞬の交差を起こす。 吹き荒れるのは、大量の鮮血。 次の瞬間に崩れ落ちたのは―――― 「――――が、はッ―――――」 巨漢の騎士が、膝をつき―――倒れた。 その胴体には大きな裂傷を負い、血を流していた。 刃による一撃が、タルカスの身に大きな傷を負わせたのだ。 此処まで戦い抜いた男と言えど、もはや助かる術など無いだろう。 ――対するカーズの右腕の刃から、多量の血が滴っていた。 それは当然の如く、タルカスの血だ。 邪悪な笑みを浮かべながら、カーズは…タルカスの方へと振り返り、歩み寄って行った。 「…理解出来ただろう?貴様如きの虫けらでは、何も出来ないと」 嘲笑うように、弱者を見下すように…カーズは言い放つ。 彼にとって、屍生人など『餌が生み出す家畜』程度の存在でしかない。 その屍生人が、究極の生物を目指すこの私を殺す?私を倒す? あれ程の大口を叩いたからには、どれほどのものかと思ったが…所詮は身の程も解らない阿呆だったか。 フン、自信過剰もいい所だ…クズが。 ―――カーズは、タルカスのすぐ傍まで歩み寄る。 彼は心底冷たい瞳で、這い蹲るように倒れるタルカスを見下ろしていた。 「さあ、命乞いをしてみせろ」 カーズは、タルカスの頭を容赦なく踏み躙った。 この程度の虫けらを殺すことなど、雑作もない。ならばせめて最大限の屈辱を与えてやろう。 私に屈服してみせろ。恐怖に戦いてみせろ。貴様の誇りを捨ててみせろ。 ―――絶望の表情を見届けてやる、ゴミが。 だが、―――タルカスからの返答は。カーズの予想とまるで違うものだった。 タルカスは、嗤っていた。 「………ッ…く、はは…はははっ………」 「…何が可笑しい」 恐怖で頭が狂ったか?カーズはそんな思考すらよぎった。 それほどまでにタルカスは、嗤い続けていた。 どこまでも、不敵に――――不遜に。 そしてタルカスが、口の端を吊り上げ。 言い放つ。 「…地獄で遭える日を、楽しみにしているぞ」 「…………」 「待っているぜ、」 「…………」 「この『虫ケラ』が」 ――――タルカスの首が、跳ね飛ばされた。 輝彩滑刀の流法による一撃が、彼の首を刈り取った。 ◆◆◆◆◆◆ 「…剣に、錨…か。まぁ、どうでもいいな」 カーズは、タルカスとナズーリンの支給品を回収していた。 とはいえ、見つかったものは西洋剣と巨大な錨のみ。後は基本支給品だけだ。 どちらも自分にとってはどうでもいいもの。武器は流法だけで十分だ。 故にランダムアイテムは放置することにした。 一先ず彼らの基本支給品だけは一応調達することにした。 闇の一族である自分たちがこのようなモノに頼るかは解らないが、念の為だ。 「さて…」 カーズは、首を喪った騎士の死体を見下ろす。 この男は最後まで屈しなかった。どこまでも傲岸に、言葉を吐き捨てた。 …気に入らんヤツだ。忌々しい。 心底苛立つ。だが、まぁいい。結局死んだのはあの男だ。 そう、勝ったのはこのカーズなのだから―――関係ない。 小娘一匹にも逃げられたが…既に満身創痍の身であったし、今は放っておいてもいい。 今は死体になど構っている暇は無い。 このカーズの目的は生き残ること。殺し合いで生還すること。 最終的にあの荒木と太田とやらも抹殺する。それだけだ。 柱の男は、ゆっくりと歩き出す。 全てはこの場で生き残る為に。この場での情報を得る為に。 邪魔な連中を、これから始末する為に。 ◆◆◆◆◆◆ 「はぁ―――はぁ――――っ………」 星は、逃げ続けていた。 必死で、逃げ続けていた。 その右腕に抱えているのはナズーリンが使っていた支給品「スーパースコープ3D」。 逃げる直前に回収したモノだ。ナズーリンの、形見のような物。 彼女は何も考えられなかった。 ただ今は、逃げることだけを考えていた。 聖を護れるのか。死んだナズーリンを裏切ってでも戦い続けるのか。 覚悟を決めて、闘い続けるのか。それとも。 ―――今の彼女に、そんなことを考えられる余裕すらなかった。 必死で必死で、彼女は走り続けた。 どこへ向かうのかさえ、解らずに。 【ナズーリン@東方星蓮船】死亡 【タルカス@第1部 ファントムブラッド】死亡 【残り 87/90】 【E-3 大蝦蟇の池付近/深夜】 【寅丸星@東方星蓮船】 [状態]:左腕欠損、右脇腹に銃創(出血中)、肋骨骨折(複数)、ダメージ(大)、霊力消費(大)、疲労(大)、精神疲労(中)、迷い [装備]:スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:聖を護る。 1:??? [備考] ※参戦時期は神霊廟以降です。 ※能力の制限の度合いは不明です。 ※ナズーリンのランダムアイテム「スーパースコープ3D@東方心綺楼」を回収しました。 ※彼女がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。 【カーズ@第2部 戦闘潮流】 [状態]:疲労(小)、全身打撲(軽傷)、再生中 [装備]:狙撃銃の予備弾薬(7発) [道具]:基本支給品×3 [思考・状況] 基本行動方針:生き残る。最終的に荒木と太田を始末。 1:どんな手を使ってでも勝ち残る。 2:この空間及び主催者に関しての情報を集める。 3:ワムウとエシディシ、それにあのシーザーという小僧の名が何故記載されている…? 4:あの小娘(寅丸星)は放っておいてもいい。 [備考] ※参戦時期はワムウが風になった直後です。 ※ワムウとエシディシ、シーザーの生存に関しては半信半疑です。 ※ランダムアイテム「ジョンガリ・Aの狙撃銃@ジョジョ第6部」はE-2の川辺でバラバラに分解して破棄しました。 ※ナズーリンとタルカスのデイパックはカーズに回収されました。 ※彼がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。 ※「村紗水蜜のアンカー@東方星蓮船」「LUCK PLUCKの剣@ジョジョ第1部」はタルカスの遺体の傍に放置されています。 <LUCK PLUCKの剣@ジョジョ第1部> 寅丸星に支給。 ディオの僕となった黒騎士ブラフォードが使用していた西洋剣。 ブラフォードが敗北し消滅する直後、人の心を取り戻した彼によってジョナサンに託された。 <村紗水蜜のアンカー@東方星蓮船> タルカスに支給。 命蓮寺の信者である妖怪、村紗水蜜が立ち絵で所有していた大きなアンカー。 振り回せば武器にはなるが、癖が強く重量もあるので扱いは難しい。 <スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼> ナズーリンに支給。 河城にとりがラストワードで使用していた重火器。 バズーカに似た銃身を持ち、高威力の砲弾を発射する。 どこか幻想郷らしからぬ近代的な武器だが、河童の科学技術の賜物なのだろう。 予備弾薬は支給されていない。 <ジョンガリ・Aの狙撃銃@ジョジョ第6部> カーズに支給。 元・DIOの忠実な部下であり囚人である盲目の狙撃手「ジョンガリ・A」が使用するライフル。 パーツを分解することで杖に偽装することが可能。 弾丸のみを必要としたカーズによって不要と判断され、文字通りバラバラに分解されてしまった。 バラバラに分解された狙撃銃はE-2の川沿いに捨てられている。 016:プラスチックハート? 投下順 018:愛し君へ 016:プラスチックハート? 時系列順 018:愛し君へ 遊戯開始 寅丸星 066:wanna be strong 遊戯開始 カーズ 068:ゆめみみっくす 遊戯開始 ナズーリン 死亡 遊戯開始 タルカス 死亡
https://w.atwiki.jp/usodakedo/pages/75.html
● P10 『小生は女である』 本名はもうない。 →言わずと知れた夏目漱石、「吾輩は猫である」冒頭より。 ● P17 幼年期は父に連れられて放浪のたび(意識が)。その後はとある一家の裕福な奴隷となり、そして今は放り出されるように自由を得てしまい……こうして振り返ると、赤い指輪と青い指輪を探しにでも出かけかねない人生ね。仲間があの子では全滅必至だけど。 →「ドラゴンクエスト5」の主人公の人生。父と放浪の旅をして過ごした後、教団につかまって奴隷として働かされた。結婚イベントでは、炎のリングと水のリングを探してくるように命じられる。 ● P18 私にも立派なモンスター使いの素質があるみたいね。 →再び「ドラゴンクエスト5」の主人公。モンスターを仲間にする素質があり、ゲーム中でも「モンスターつかい」の肩書きを得られる。 ● P19 次郎、恐ろしい子。 →美内すずえ「ガラスの仮面」の名台詞より。 ● P24 ……やれやれだわ。 →「ジョジョの奇妙な冒険」の台詞、「やれやれだぜ」より。 ● P28 「大体、この名前なのに専用ハウスがないのは意義ありすぎる」 →リカちゃんハウスのこと。 ● P32 「そうですわ。猫伏景子と申します。」 →ゲーム「Remember11」の登場人物犬伏景子が元ネタ。キャラクターデザインは左 ● P32 某十五人の少年少女漫画だったら『イマキ』と仲間内で呼称されそうね。 →鬼頭莫宏の漫画作品「ぼくらの」 ● P34 無人島で遭難中に知見の無いキノコが生えているのを発見して。 →東宝の特撮ホラー映画「マタンゴ」 ● P35 この程度の出番で~第1部だけあんなに長くて。 →ジョジョの奇妙な冒険と思われる。実際第2部は意外に短い。 ● P37 「あなた、尻尾にヤドカリとかくっつけたら進化しそうね」 →ポケットモンスターのヤドン。尻尾にシェルダーがつくとヤドランに進化する。 ● P39 とっとこ嘘だろう。 →とっとこハム太郎より。 ● P41 残るエリナちゃんはまだカタカタしていた。小さき森の精霊として映画に出演できそうな首の傾け方ね。 →「もののけ姫」木霊のこと。 ● P53 いずれ彼女は世界の敵となる……予定は一切なさそう。 →上遠野浩平、ブギーポップシリーズより。ブギーポップは世界の敵の出現に対して登場する。 ● P60 状況に即した歌に変更する。「……びりーぶざもーにんぐさーん~♪ ……ふんふんふんふんんーんふー♪」 →ゲーム「MOTHER」のBGM「POLLYANNA (I BELIEVE IN YOU)」。POLLYANNAは日本語で楽天家という意味。 ● P64 それでゾロリとあらゆる解決が集うのよねぇ。 →おそらく「かいけつ(怪傑)ゾロリ」をもじってる……のか? ●二章 P4(paranoia,poison,personal,promise) →P4はPS2のゲーム「ペルソナ4」の略称 ● P77 「……ほほぅ、なかなかの推理ね」←キューブの技の頭文字 →ゲーム「LIVE A LIVE」の主人公の一人、キューブの技名から。ハイスピードオペ(H) 、アップグレード(U) 、マインドハック(M) 、アンチフィールド(A) 、ノイズストリーム(N) 、インフォリサーチ(I)、スピンドライブ(S)、メーザーカノン(M)の八つの頭文字を繋げると「HUMANISM(ヒューマニズム)」になる。 ● P77 「あ、いやでも白太を殺害した可能性はあるわけかぁ。かー、探偵は難しい」←ディスコ →舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」より。? ● P90 あの尖り具合からして、街に妖怪が襲来しまくっているようね。 →言わずもがな、鬼太郎の妖怪アンテナ。またの名をアホ毛。 ● P90 外で待機して、家政婦の修行のために出歯亀に励む。 →家政婦は見た! ● P93 一嗅ぎしただけで、ステータス異常を大量に被りそうね。さりとて、こちらが学習したとしても使用する気にはなれず。 →「FF」シリーズで、主にモンスターのモルボルが使う「臭い息」。「ラーニング」によって習得することができる。 ● P94 どう足掻いても絶望なのよ →ホラーゲーム「SIREN」のキャッチコピー ● P99 プロ猿ファーゴル…… →ゴルフ漫画「プロゴルファー猿」 ● P100 以前、この子にスーパーでの会計を試させてみたら、『ざわ、ざわ……』とレジの空気を一変させたもの。危うく地下施設(奥の事務所)に連れ込まれるところだったわ。 →福本伸行「賭博黙示録カイジ」から。 ● P101 ねんがんのいもうとキャラをてにいれたぞ! →「ロマンシングサガ」「ロマンシングサガ ミンストレルソング」内のイベント、「アイスソード」内の台詞が元ネタ。 ● P101 私、大人でも子供でもないおねーさんなのよ。 →MOTHER2のキャッチコピー、「大人も子供も、おねーさんも。」より。 ● P114 「残念だけど私の中のオラはワクワクしてないの」 →ドラゴンボールより。オラ、ワクワクしてきたぞ! ● P114 「その日は駄目ザマス、塾ザマス」 →ドラえもんより。スネ夫の母の台詞。 ●三章 LIE³ AGAIN →PSのソフト「Linda³ AGAIN」。ちなみにリンダキューブアゲインと読む。 ● P119 これでもマジカルバナナ世代ですから遅れはとりませんよ。 →マジカル頭脳パワー ● P119 我が家のテレヴィジョンは横取り四十万を映し出していたものでして。 →クイズ世界はSHOW by ショーバイ!! ● P121 ああっ……! 金が欲しい……っ! →これも「賭博黙示録カイジ」から。 ● P122 わたしリカちゃん、今貴方の目の前にいるの。 →「リカちゃんでんわ」から派生した怪談。 ● P166 そして、誰もいなくなった。 →アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」 ● P170 うーん、当事者じゃないからぽっくんにはさっぱり。 →小林よしのり「おぼっちゃまくん」より。主人公「御坊茶魔」の一人称。 ● P170 さーて、えーと……落としてきたパンくずが近眼の所為で見えないわね。 →童話「ヘンゼルとグレーテル」より。 ● P171 うーん、DCMC →MOTHER3で登場するバンドの名前から ● P172 そろそろ、大江少女の事件簿の本線に戻ろうかしら →探偵漫画「金田一少年の事件簿」 ● P172 例えるなら、ドラなんとか(野球チームでも未来のえもんさんでもありません)で理想の性格診断が出るまでリセットを繰り返すように。 →ドラゴンクエスト3。最初の質問で勇者の性格が決まる。性格によってステータスの伸びが違う。()内はそれぞれ本拠地をナゴヤドームとするプロ野球チーム「中日ドラゴンズ」、「ドラえもん」のこと。 ● P172 或いは侍何ちゃらでひたすら鍛冶屋に通い詰め、死屍累々と行われるソフトリセットの作業として。 →侍道2。刀を鍛冶屋で鍛えれるが上昇値がランダムなため、より強い刀を作るためにはリセットが必要。 ● P172 また更にはボールを生物に投げつけてその身を束縛しようというゲームで個体値が高い希少な生物を捕獲するために繰り返されるリセットの如く。 →ポケットモンスター。隠しステータスに個体値というものがあり、特に固定シンボルは会話時に値が決定するので高い値を出すためにリセットゲームと化す。 ● P180 それとも『僕は自動的なんだ』と嘯く算段? →上遠野浩平、ブギーポップシリーズより、ブギーポップの台詞。 ● 四章 「remember1I」 →アドベンチャーゲーム「Remember11 -the age of infinity-」。ちなみにキャラクターデザインは左。 ● P185 媚びて退かずに省みないと 北斗の拳のキャラクター、サウザーの台詞「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!帝王に逃走はないのだ!!」から ● P189 「すいませェん、きみを助けたいわけじゃないんですよ、チクリ魔、もといU.N.オーエ……からいろいろと報告を聞きましてね、ちょっと見に来ただけなんです」 →これもアガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」から。 オーエン夫妻の名前を省略すると U.N.Owen=Unknownという掛詞になっている。 大江湯女の元ネタをさりげなく言及。 そういえば、1章のタイトルが「unknown heroin」なのはここに掛けたのか。 加え、「すいませェん」はSBR(スティール・ボール・ラン)のキャラ、ブラックモアの口調。 ● P199 千葉県の生物なんでも二足歩行改造工場もとい夢の国 →東京ディ○ニーランド。 ● P199 ……早く、人外になりたい、この気持ちが、嘘にならない内に。 人間妖怪のままで、生き続けていくのがつらくなっているから。 →「妖怪人間ベム」の合い言葉、「早く人間になりたい!」より。 ● P199 『あべし』側に立つべきなのでは。 →「北斗の拳」で主人公にやられ死んでゆく名もなきモヒカン族の叫び。 ● P202 僕らが体育館でズキュゥゥゥンされていた日、 →「ジョジョの奇妙な冒険」より、キスシーンの擬音から。 ● P215 今の僕には理解できない。 →アニメ「ぼくらの」のOP曲の一節から。 ● P215 見つめ合ってるから素直にお喋りとか一切なく サザンの名曲、「TSUNAMI」のサビから。 ● P218 救助船は沈没させられて、タヌキ汁にされたお婆さんの後を追ってしまいました。 →童話「カチカチ山」、捕まえたタヌキをタヌキ汁にしようとしたお婆さんは、逆にタヌキに撲殺されタヌキ汁(婆汁)にされた。 ● P220 左手は添えるだけではとても済みそうになかった。 →SLAM DUNK ● P222 ガッシ、ボカ →ケータイ小説「Deep Love」より、「ガッシ!ボカ!」。2chではスイーツ(笑)の代名詞として大人気のフレーズ。 ● P223 一羽だけ特別に生まれたウサギ林檎を化の山まで行かずとも捕獲し、 →童謡「故郷」 ● P224 顔面血だらけで『国へ帰るんだな……お前にも家族が、って僕か』とか言ってやりたくなるぐらい腫れてたもんな。 →ストリートファイターのガイル ● P228 『悪いな、僕は三人専用なんだ』 未来の世界の秘密道具が介入しない現実だからこそ、 →「ドラえもん」より。前者は、スネ夫がのび太への嫌がらせとしてよく使う台詞。 ● P229 一応四人パーティだから、クリスタルのかけらを拾いに行ったり財宝を奪いに鬼が島へ船で渡ったり出来るな。 →FF3・5、桃太郎 ● P232 「ふふふ、世の中に不思議なことなど何もないのよ」 →京極夏彦、京極堂シリーズより、京極堂の名台詞「この世には不思議なことなど何もないのだよ」から。 ● P233 ……んー、我が世の春が来た。 →ターンエーガンダム ● P233 「それにしてもあなた、しぶといわね。何度生還すれば気が済むのかしら。永久リレイズ?」 →FFTのアビリティ。 ● P234 「人は皆、時計仕掛けなんだよ」 「あら私、オレンジは嫌いなのよねぇ」 →アンソニー・バージェスの小説、あるいはスタンリー・キューブリックの映画「時計仕掛けのオレンジ」より。 P234 「残念だが、僕に同じ死亡フラグは2度通用しないってことさ」 →聖闘士星矢「聖闘士に同じ技は2度通用しない。」 ● P237 「ソクラテスごっこしているわ。哲学でお腹を膨らませる研究に余念なし。」 →ギリシャの哲学者ソクラテスが行った「問答法」の別名である「助産術」より。 ● P237 「本当は十六歳の時に勇者になる予定だったのよ。」 →DQ3 ● P237 「僕も先代から色々引き継いで皇帝になるつもりだったんだけど、その後に高原に行けとか面倒なこと言うから断って蟻の苗床になってしまったよ。」 →ロマンシング サ・ガ2 ● P237 「よっこ、ら、しょー」「「もん!」」 →羅生門 ● P238 「手乗りまーちゃんとか素敵だなぁって。こうね、ちょびちょび手足を動かして僕の手の平をくすぐったくだな」 →ライトノベル、とらドラ!のヒロイン逢坂大河のあだ名「手乗りタイガー」より ● P239 「ピエールとカトリーヌ達にもご飯をあげないと」 →ミリオンナイツの伝説的シモネタソング「ピエールとカトリーヌ」 ● P239 「いつからお嬢ちゃまちゃんに逆戻りしたんだい、きみ」 →小林よしのり「おぼっちゃまくん」。主人公「御坊茶魔」はたくさんの亀を飼っていて移動に使ったりしている。
https://w.atwiki.jp/bmrog/pages/1483.html
【にいな】 「上遠野 にいなです。とくに、すごいことをしてたりはしない女子高生です。」 「気持ちよさそうなことをみつけちゃうと妄想する癖があって…。こ、こないだの電車も、とってもきもちよかったです…///」▽ 【GM】 平日の朝、特に何事もなく通学電車を済ませ、私立丹桜学園に着いた上遠野にいな。 だが、この時、彼女はまだ、自らが起こした過ちに気付いていなかった。 二時間後。二限目の科目は体育。内容は水泳である。 ……水着を忘れたのだ。▽ 【にいな】 「え、えええ…!こ、これはちょっと…」自分の浅はかさに軽くめまいを起こしつつ、周囲を見回す。 更衣室の友達たちはもう着替えを始めており、それがますますわたしの焦りを募らせる。▽ 【GM】 さすがに水着は貸して貰うわけにはいかないだろう。 ここは先生に言うしかない。▽ 【にいな】 「ん、ごめんねみんな、ちょっとわたし、先生のとこいってくる…!さきにいってて!」 心配する友達たちに何でもないといいながら、もうプールそばに来ているだろう先生のところに駆け足で向かう。 【にいな】 「あの…先生、じ、実は…ごにょごにょ…」先生の耳元で忘れてきてしまったことを告げる。さすがに普通の声のトーンで言うのは恥ずかしい。▽ 【先生】 「なら、全裸でやるしかないな」体育担当の女教師はさもそれが当然の如く、にいなに言い放つ。▽ 【にいな】 「え…、そ、その…や、休むという選択肢は…ないんですよね、きっと…」がくりとうなだれるが、裸で…わたしが裸…頭の中でその言葉を反復する。 「(でも…これってチャンスじゃ…。先生の許可を得て、は、はだかで…)」ごくりと生唾を飲み込むと先生に一礼して、女子更衣室にもどる。 もうみんなは着替えてしまっているのだろう。一人きりの更衣室でこれからの自分のことを考えながら制服を脱ぎ始める 朝の電車の中のこともあって、ショーツはすでに湿り気を帯びている。それを足首からするりと脱ぐ。そして、貧相な胸に申し訳程度につけているブラもはずし… 【にいな】 「(こ、この格好で…っ)」ごくりっ。のどを一回大きく鳴らし…更衣室のドアをあけ放つ 「(これからみんなに裸みられて…わたし、もう終わっちゃうかも…っ)」そんな物騒なことを考えながらも、胸のどきどきは止まらない。そしてそのままプールへ…。▽ 【GM】 プールでは皆が整列して待っている。当然、皆スクール水着だ。その中に、ただ一人、全裸のにいなが並ぶ。 先生の前のため、クラスメイトは大声では何も言わないが、ひそひそと声が聞こえ、にいなの身体に視線が突き刺さる。 ちらりと近くの男子生徒を見てみれば、にいなの方をちらちらと見つめ、水着には大きなテントが張ってある。▽ 【にいな】 「(わ、わたし、これをネタにまた…呼び出されちゃうのかな…)」もはや、どのネタで呼び出されてレイプされているか本人すらわからないぐらいのいろんなネタで呼び出しをされてレイプされる日常のにいな。きっとこの件でまた、その相手が増えてしまうに違いない。 「(友達のみんなも、それは知ってて…わたしが、そういう事が好きな子だって思われてるから、助けてもくれない…)」 そんなみんなの視線に…息が自然と荒くなるにいな。 肌はみるみる赤みをまし…愛液がプールそばの乾いた床を濡らす。▽ 【先生】 「まずは準備運動からだ。さぼるなよ」そう言って先生が皆と一緒に準備体操をする。 準備体操は身体を伸ばす動作が多く、身体を手や足で隠すようなことはなく。水着を着ていないにいなに対しても、それをしろと指示をする。▽ 【にいな】 「(これから水にはいるんだもの…たしかに…準備運動が必要なのはわかるけど…)」恥ずかしいのになぜか顔が笑ってしまう、喜んでしまう。 そんな中、手を上に伸ばし後ろに体を曲げる…。顔だけ動かして自分の体を見ると興奮しきった乳首は、空に向かって尖っている。 【にいな】 「(あぁ…レイプのときは、体をみせびらかしたりしないけど…これじゃ、まるで、自分で隅々まで見てっていってるみたいじゃない…///)」▽ 【GM】 男子生徒の多くが前屈みになり、女子生徒もにいなの方を見る。先生も、生徒も、皆、裸身のにいなに注目している。 すると、男子生徒の一人がにいなに近づき、腕を掴む。 【男子生徒】 「こっちに来るんだ」と、にいなを連行するように、男子更衣室に連れて行く。他の男子生徒もそれに習い、全員更衣室に向かう。先生や女子生徒はただそれを見つめるだけで、止めようとはしなかった。▽ 【にいな】 「で、でも…じゅ、授業がっ…!」そういいながらも、逆らうことはできない。だって、数えきれないほどの弱味をわたしはにぎられているのだから。 でも、きっとみんなは知っているんだ…。こんなふうにされて、喜んじゃうわたしのことを…。 そう、弱味が増えてくれることを確かに…わたしは望んでしまっている…。▽ 【GM】 男子更衣室にクラスメイトの男子生徒全員と、全裸のにいなが入る。 クラスメイトは水着にテントを張ったまま、にいなを取り囲む。 男子生徒が二人、互いににいなの腕を掴み、この場から逃げ出せないようにしていた。 【男子生徒】 「いい格好だな……俺達に言うことがあるんじゃないか?」囲んだ生徒達が、スマホやケータイを取りだし、全裸のにいなの姿を撮影しながら、そう尋ねる。▽ 【にいな】 「わ、わたしのことを…す、すきにしていいから…ど、どうか、ほかの人にはばらさないで…」そう、弱弱しく言う。だが、みんなにレイプされ、先生からでさえも裸で受けるのが当たり前と言われてしまうわたし…。誰にばれてほしくないんだろう。 そんな自虐的な思いに何も入っていないはずの秘所はきゅうっと何かを求めるようにきつく締まる。▽ 【男子生徒】 「好きにして良い? 具体的にどういう事かな?」にやにやと意地悪く、クラスメイトはにいなに問いかける。 両腕は掴んでいるものの、性器には触れず、ただにいなの裸身を目で犯しているだけである。▽ 【にいな】 「そ…それは…。」さっきみたいに言えばだいたい男たちは好き勝手に扱う。今日もそうだと思い込んでいたにいなにとってそれは衝撃だった。 「(わ、わたしが望んでるって…い、いわないといけないの?そうしたら…仕方ないから我慢してるっていう理由が…っ)」 そんなことを一瞬考えたりもしたが…、たくさんの視線にさらされ続けたことで、男たちの腕に食い込むぐらいにつかまれている軽い痛みですら、にいなの劣情を誘う。 【にいな】 「わ、わかりました…。この…わたしを、いつもみたいに前後から…レイプしてくださいっ…」 言った!言ってしまった!もう…弱味とか関係ない。わたしが…言ってしまったんだ。 両腕をつかまれたまま、膝を軽くまげ、がに股上になり、股間を軽く突き出す…。その間抜けな格好を想像し、ますますわたしの劣情は燃え上がる。▽ 【男子生徒】 「『お願いします』が必要だろう? 土下座して、な」そう言うと、にいなの両腕を掴んでいた男子生徒が手を離す。 にいなは一応の自由を得た。だが、それは、全裸で土下座するためだけの身の自由だ。▽ 【にいな】 土下座…、あれだけ言ったのに、あんなに恥ずかしいことまでしたのに…わたし、土下座までしないといけないの…。 そう思うにいなだったが、もう、止まらない。男子更衣室の床に両ひざを突き、丁寧に両手を重ね、地面につき、頭を下げる。 【にいな】 「お、おねがいします…。わたしの、上遠野 にいなを、オマンコとアナルでレ、レイプしてくださいっ!!!」 ひれ伏したまま、大きな声でそういう。さらなる羞恥で涙があふれてきたが、悲しい気持ちはみじんもない。これで、わたしはずっと…▽ 【男子生徒】 「そこまで言うなら、レイプしてやらないとな」再び男子生徒の二人がにいなの両手首を掴むと、仰向けにさせて床に押しつける。 同年齢の男二人の力で押さえ付けられれば、びくともしないだろう。そして、男子生徒の一人がにいなの両足を広げ、秘部に肉棒を近づけ……容赦なく、ずぶりと突き刺す。▽ 【にいな】 「は、はいって…きたぁ…っ v先ほどから続いていた視線ややり取りが善城の役割を十分以上に果たし、その男子生徒のチンポを豊富な愛液により奥へといざなう。 毎日のレイプにより、締め付けは最初のころよりやや劣ってしまっていたが、それ以上にレイプ者を喜ばせる名器に変化してしまっていた。 その名器が、屈服したにいなにかわり、挿入者にまるで媚びを売るようにリズミカルに動く。▽ 【男子生徒】 「へへ、上遠野の膣はたまらねぇぜ……うっ!」にいなの膣に肉棒を突っ込んだクラスメイトが、上機嫌に呟く。そして若さからか、早々に精を吐き出してしまう。 ゴムなど付けてはいない。当然、膣への生だしだ。 【男子生徒】 「おい、どけよ。次は俺だ。二、三週すればいいだろ」先ほどにいなを犯していた男子生徒をどけて、新たな男子生徒がガチガチの肉棒を突っ込んでくる。▽ 【にいな】 自分で望んでレイプしてほしいといったにいなだったが…膣の具合を褒められるのはやっぱりうれしい。 具合がいいということは、まだまだ使ってもらえるということだ。 一方的に使われて、一方的に射精されてまだイくには物足りないにいなだったが、きっとこれから…イきすぎてつらくなるまでぼろ雑巾のように使ってもらえるだろう。 膣内に出された熱い液体からそんな期待をはっきりと胸にいだくにいな。▽ 【GM】 ……結局の所、四週した。 膣内に、腸内に、咥内に、身体に、白濁の精を大量にぶちまけられ、太ももには『正』の文字が何十個も書かれていた。 【男子生徒】 「気持ちよかったぜ、上遠野。そうだ、おい、上遠野、服を持ってこい」そう、きっともう誰もいなくなった女子更衣室から服を取ってこいと命令する。▽ 【にいな】 「う…うんっ…。」幾度もの絶頂を迎え、さらに冷たい男子更衣室の床に長らく横になっていたせいか、からだがとてもだるい…。でも、みんなにレイプで使われるだけの存在となり果てたわたしには断るという選択肢はない。 落書きと、白濁まみれの体を引きずるようにしながら男子更衣室から女子更衣室へ…。 【にいな】 「(男子更衣室の匂い…すごくなってた… v )」白濁の匂いが頭の中までしみこんでいるにいなは女子更衣室にもそのきついにおいを持ち込んでしまう。 そして、白濁まみれの手で自分の制服や下着などをロッカーからとると…落とさないようにそれらを抱きしめながら男子更衣室へと戻った。▽ 【男子生徒】 「よし来たな。それじゃあ、下着をよこしな」服を着ずに服を持ってきたことに感心しながら、手を出す。下着を受け取るためであろう。▽ 【にいな】 「うん…こ、これでいい…?」そういいながら下着を渡す。ユニクロで500円ぐらいで買った白のショーツと2000円ぐらいで買ったブラだ。 「(なににつかわれるんだろう…。)」渡した相手の手元に視線が集中してしまう。▽ 【男子生徒】 「へへ、いや、大したことじゃねぇさ」と、先ほどまで着ていた下着を、カバンの中にしまう。 クラスメイトである男子生徒に、今まで着けていた下着を、確保されたのだ。 【男子生徒】 「これから毎日、下着を着けてきて、俺達に渡せよ。いいな?」これは命令だ。にいなに逆らう余地は、ない。▽ 【にいな】 「わ、わかり…ましたっ…」下着…何に使われるんだろう、渡した後わたしは下着無しの生活なのかな…。あと、渡す分毎日買わないと…。 そんなふうにごく自然に、命令された内容をこなそうとするバイパスが出来上がってしまっている。 【にいな】 「(わたし…、命令されるの、き、きもちい…)」きゅうっと膣がしまり、どろりと白濁液と愛液のブレンドが べちゃりという音を立てて床に垂れる。▽ 【男子生徒】 「これからちゃんと頼むぜ」カシャリ、と、クラスメイトが白濁塗れのにいなの裸身を撮影する。 皆、にいなに命令する手形を手に入れたと言うことだ。 これから、卑猥で、淫靡で、容赦のない命令される事も増えるだろう……▽ 【にいな】 「は、はいっ…今日もご使用…ありがとう、ございましたっ」深々と男子生徒たちに頭を下げる。 「(また弱味を握ってもらった…)」今日も、こうやってレイプしてくれる人間を増やす。 そんなゆがんだ性癖は、ますますエスカレートしてゆくであろう命令に更なる期待をしてしまうのだ。それは男子生徒たちを見る目に現れている。そんな、暗い炎のような欲情…。▽ ――特にそんなこともなく。 【先生】 「そっか。じゃあ、上遠野は見学な」体育担当の女教師は当然の如く、にいなに言い放つ。▽ 【にいな】 「はいっ…」そう、それが当然の反応。 「(でも…ちょっと、きもちよかったから…いいかっ)」ショーツのシミが大きくなっているのは見なくてもわかる。 そして、水泳をするクラスメイトを見ながら思うのだった。あんな日が、本当に来ないかな…と。▽
https://w.atwiki.jp/jojobr3rd/pages/294.html
泣いている女の顔が見える。汚らわしい断頭台に上らされ、屈辱の果てに死んだ彼女の顔は、血の涙とどす黒い憎悪に塗れていた。 何故彼女が死ななければならなかったのか。一体彼女が何をしたというのだろうか。 痺れた頭は靄に包まれ、俺にはなにもかもがわからなかった。首筋に叩きこまれた太刀すら鈍く、遠い世界のものに思えた。 ただその時、俺は世界を呪った。 俺はその時から一人の騎士ではなく、男でもなく、人間ですらなく、一つの感情となり果てた。 俺は『怨』そのものに、なり果てることを、選んだのだ。 どうしようもなくわからない。問いが綻び、意味をなさなくなるまでに、俺は答えを探し続けた。 繰り返し、自らに問い続けた。そして、それでも納得できる答えは出てこなかった。 高貴な彼女はその身を捧げることで、民草の、我ら戦士たちの、そして愛する祖国の平和を願ったはずだ。 内に湧き上がる恐怖や絶望を押し隠し、犠牲となることを断腸の思いで決断なさったはずだ。 そんな彼女であったからこそ。そんな彼女の孤高な姿があったからこそ。 我ら戦士も身を捧げることに躊躇いはなかったのだ。悔いなく運命を受け入れ、下劣な処刑も受け入れた。 だが、だが、だが……ッ! ならばいったい何故…… そして何のためにッ! 俺はエリザベスを呪う、死を呪う、誇りを呪う、運命を呪うッ 彼女の誇りは地に棄てられたッ まるでボロ雑巾かのように、誇りは投げ捨てられ、踏みにじられ、侮辱されたッ 彼女の死がいったい何をもたらした? ……なにもない、零だッ 無だッ! 後に残ったのはエリザベスが残した偽りの物語、我々の敗北と犠牲のみ。汚名を歴史に刻まれ、我々は永久に蔑まれるのだッ 彼女が何のために死んだのかも知らない愚民たちに。彼女が守りたいと願った民衆たちに。 ならば、我々は……一体何なのだ? なぜ我々は死んだのだ? 我々は、誰のために、なんのためにッ?! 許されない……ッ 許してはならない……、この非道はッ! 悪徳はッ! ああ、俺は全てを呪う。この世の全てを呪う。塵一つ残さず、俺はこの世の全てが憎い。この世全てを憎悪する。 死が訪れても……いいや、死が訪れた後も、俺はその悠久の闇の世界の中で、世界を呪い続けた。 呪詛を吐き、怨念を振りまき、妄執を漂わせ、噴怒を吐き散らした。 それでも運命が変わることはなかった。時は流れ、エリザベスは栄華を築き、やがて我らの汚名すら時の廃屋に取り残されても。 それでも俺は忘れられなかった。擦り切れることなく、俺は心にこびり付いた感情一つ手に、いつまで願い続けた。いつまでも、念じ続けた。 ―――そして時は訪れる。 『君は……、いや君たちがタルカスとブラフォードだね?』 許しを請うことなんぞ、もはや求めていない。忠誠を誓ったメアリーさまの物憂げな表情は、考えるまでもなく浮かんでくる。 優しい彼女は涙を流すに違いない。心痛め、懇願するような顔で俺を見つめる彼女が思い浮かぶ。 だがそれでも、だ。俺の心に安らぎはもはや必要ない。俺の心の狂い、焦がれるような気持ちは収まらない。 いつの間にだろう、俺が求めていたもののはすり変わっていた。俺は許しを『請われる』ことを求め始めていた。 そう、あの憎きエリザベスの末裔たちが。愚かで醜い群衆たちが。安穏と平和を貪る人々が、我々にこんな結末をもたらした運命が! 俺が求めてやまないのは因果応報、それだけだ。我らに襲いかかった悲劇を、俺は奴らに突きつけてやりたい。何の犠牲の上に、誰のおかげで生きていられるのか、奴らに見せつけてやりたいのだ。 突然訪れた理不尽を味わうがいいさ。我々がどれだけ嘆き、怒ったかを身をもって知るがいい。 俺が求めるのは贖罪だ。俺はこの手で、お前たちに全てを知らしめてやる。 その時になって知るがいい。我々が、俺たちが、そして俺が。どれほど怒ったかを。どれほど苦しんだか、どれほどこの世を呪ったことかッ! ああ、そうだ。或いはこの感情は復讐なのかもしれない。 全てを俺から奪いさり、それでものうのうと日々を過ごしていく、全ての者に対する、俺の『狂ッた』様な…… ―――復讐心だ ◆ 高々と振りかぶり、咆哮とともに叩きつけられる。空を切った一撃は暴走したエネルギーのままに大地と衝突、堪らず地面が陥没した。 直撃したならばどんな強靭な肉体の男であろうと、肉屋に置かれたミンチのようにひきつぶされてしまうだろう。 眉一つ表情には出さないが、その化け物じみた怪力にタルカスは冷や汗をかく。 一手でも間違えれば、嵐のような連撃が彼を襲うだろう。そうした後に、一体彼はどれだけ『残って』いられるだろうか。 そんな恐怖を微塵も感じさせないほどに、タルカスの行動は冷静だった。 男は半歩だけ後ろに下がり、鼻先をかすめる攻撃を涼しい顔で受け流す。 同時に大柄な体とは不釣り合いなほど軽やかに跳躍。鉄鎚の細い柄の部分に立ち、至近距離から槍を放とうと振りかぶる。 が、直後、即座に後退。ブラフォードの髪が大蛇かのように襲いかかり、危うく喉もとを食い千切られかけたのだ。 両者同時に引き下がり、二人はまた睨み合いの形に。一瞬だけおさまった二人の間を、風が吹き抜けていった。 風に乗るかのように、今度はタルカスが仕掛けた。獰猛な笑みを浮かべ、騎士は鋭く突きを解き放つッ! ブラフォード、槌を振り下ろし、柄で切っ先をいなす。二人の力が拮抗し、互いの腕が力を振り絞らんと膨張した。 タルカスはそれを予期していたように、すかさずバックステップ。拮抗をいなされ、黒騎士が体勢を崩された。 すかさず足元目掛け、またも突き。ブラフォードはこれをかろうじてさける。自慢の髪が切断され、紙吹雪のように辺りを舞った。 舞う土埃、黒のベールを切り裂き、無数に襲いかかる槍の雨。今度はブラフォードが冷や汗をかく番だ。 頬をかすめ、髪を切り裂き、タルカスの槍は的確に急所を目掛け穿たれる。紙一重の攻防に、憎悪に滲んだ表情が焦燥へと色を変えた。 突き、突き、そして突きッ 突き、突き、更に突きッ! 鉄鎚は防戦となるとたちまち扱いづらい獲物へと変貌する。 重くバランスの取れない得物。刃はなく、斬撃を受け止める場所は限定されている。 ブラフォードほどの歴戦の勇者でなければ、この猛攻をしのぎ切ることなんぞ不可能であったに違いない。 そんな彼でさえも、タルカスの攻撃の前で無事ではいられなかったほどだったのだ。 かろうじて致命傷を避けるも、身体に無数のキリ傷を負い、自慢の髪の毛は無惨にも切り裂かれていった。 タルカスが大きく振りかぶった。突きから一転、今度は槍をしならせると横薙ぎでブラフォードを一刀両断ッ これは……防ぎきれんッ! 刹那での判断、黒騎士は大地に伏せ、泥も気にせず横に転がる。頭上を心惜しげに死神の鎌が通り過ぎて行った。 そのまま低い体勢で返しの一撃も避け、ブラフォードは状況を打破しようと槌を握った。 しかし流れは変えられない。そうはさせまい、鉄鎚を振るう隙すら作らんと、タルカスは追いたてるようにその手を緩めない。 むしろ今こそ戦いに決着をつけんと、タルカスは勝負に打って出たッ 手数勝負の片手の一撃でなく、全体重を乗せた必殺の構え。隙は大きいが、今のブラフォードにその始動を止める手段はない。 刃が飛び交い、火花が散る中で、ブラフォードにできたことは髪で防御壁を展開するのみ。 この時を待っていたとばかりに、タルカスが間合いを計る。大地を踏み抜くような勢いで、足元に力を込める。 そして、瞬間、弾丸のように槍を抱え、彼は黒騎士目掛けて突進していったッ ブラフォードが必死の努力で広げた黒の弾幕。嘲笑うように、タルカスの一撃が、黒騎士の守りを打ち砕いたッ しかし両者はともに、歴史に名をはぜる猛者だった。 黒騎士、まるで曲芸師かのようだ。彼はすんでのところで、男の槍をあの細く頼りない鉄鎚の柄の部分で受け止めていたのだ。 タルカスの顔が驚愕と、好機を逃した自らの失態に歪んだ。 髪の毛一本の誤差も許されない。なんという技術、なんという度胸。 攻撃を防がれることを予期していなかったタルカス。あまりの重量攻撃に体が痺れたように動けなかったブラフォード。 故に二人は互いに大きな隙を見せながら、共に致命的と言えるまでのその一瞬を逃し、免れることができた。 一瞬の空白、そして同時に動いた二人。振りかぶられた鉄槌、引き絞られた長槍。 タルカスの左頭部を襲った鉄鎚は僅かに額を切るのみ。ブラフォードの右頬に長い引っ掻き傷を残し、槍は彼の体から離れて行った。 呻き声を漏らし、武器を振り切り、そして即時撤退。砂埃を舞わせ、姿勢を低く保ち、そしてまた二人はにらみ合う。 観客がいたならばその攻防はまさに拍手万雷、観衆騒然。 ブラボー、タルカス。ブラボー、ブラフォード。 ギリギリの攻防は互いの手を知りつくし、歴史に名を刻んだ英雄たちの最高のショー。 二人は動きだす。見えぬ群衆の称賛に耳を傾けることなく、互いの姿の身を見つめ、共に目指すは勝利のみ。 タルカスが吠える。ブラフォードが迎え撃つ。騎士たちの戦いは続いて行く。誇りと意志をぶつけ、彼らの決闘は終わらない。 どれだけ時間が流れたことだろうか。 斬撃の火花が幾度と散り、地面に穿たれた槍跡、陥没した鉄鎚の跡は数知れず。 流れた血液は僅か、しかし反比例するように冷や汗と脂汗は膨大。それでも一向に戦況が変わることはなかった。 押しては引き、退いては迫る。攻めては凌ぎ、切り抜けては打って出る。 拮抗状態は続き、何度となく繰り返された決め手に欠ける膠着状態が訪れていた。 ブラフォードが伸ばした髪の毛が空を切る。それでも口惜しそうに最後に一伸びした黒の大蛇。 タルカスは鎧に引っ掛かった髪を切り飛ばすと後ろに下がり、大きく息を吐いた。 戦闘の合間に流れる、束の間の静寂。視線を逸らすことなく、相手から目を離すことなく。その視線をほんの少しだけ、彼は上空に向けた。 一体戦い続けてどれほどたったのだろう。まもなく夜が明けようとしていた。 東の空が明るくなりかけているのを見て、タルカスは先のブラフォードの言葉を思い出した。 『夜に生きる者たち』、嘘か誠かはともかく、それを信じるのであれば戦いはいよいよ終盤といったところだろうか。 ここまでよく持ちこたえてきたものだ。無尽蔵のスタミナ、多少の怪我はものともしないタフネス、髪の毛と鉄鎚のコンビネーション。 考えてみれば彼はゾッとするような怪物とここまで五分の戦いを繰り広げているのだ。 称賛されるべきはタルカス、忠誠の騎士。槍一本で化け物に立ち向かう、姫を守るため闘う姿はまさに英雄譚の一節。 その時、敵が動いた。タルカスは突進してきた相手に対し、槍を突き出し応戦する。 ところがブラフォード、大胆不敵、秘術巧妙。槍の刃を伝い、身体がぶつかり合う位置まで接近。戦法を変える。 鉄鎚で相手の槍、つまり攻防の要を抑え、髪の毛で自由を奪う戦法だ。 タルカスもそれを察してだろう。絶好のカウンター機会を放棄すると、素早く跳び下がり、再び槍の距離を彼は取る。 ハンマーは届かず、髪の毛を伸ばせばその懐へと飛び込める位置。舌打ちをした怪物がまたも攻める。その顔面を掠めるように、刃が飛んだ。 焦りは瞳を曇らせる。怒りは頭脳を鈍らせる。 ブラフォードは搦め手から攻め立てるはずが、いつのまにかタルカスに、搦め手でいなされていた。 ここまで化け物相手に騎士が戦えたのも、彼がひとえにブラフォードの性格、そして感情を見事に制してきたからだ。 達人同士の争いの中、タルカスは抜群の勘と集中力、経験と冷静さで、今、戦いを掌握しつつあった。 幾度と打ちあう。何度となくぶつかり合う。そして時間は流れ、場所を変え、それでもまだ、戦いは終わらない。 レンガ造りの街並みの中、せりあい、削り合い、潰し合う。 ブラフォードの灰色の肌には、今や数え切れないほどの傷ができていた。タルカスが握る槍は互いの血で、赤く色を変えていた。 戦いの合間にタルカスが叫んだ。もういいじゃないか、もう戦うな。これ以上、俺はお前と戦いたくない。 悲痛な叫びを黒騎士は無視する。どれほど戦えどメアリーさまはもう帰ってこない。どれほどお前が勝利しようとも彼女は笑ってくれやしない。彼女の嘆きはいやされない。 タルカスの声は届かない。ブラフォードは止まらない。獣のように唸り、亡者のごとく、無機質に金槌をふり続ける。 これ以上戦いをつづけたら、俺はお前を本当に傷つけなければいけない。これ以上やったら、俺はお前を殺してしまう。 もはやこれは戦いでない、何か違ったものになっているじゃないか。だからブラフォード、目を覚ましてくれ。誇りを取り戻してくれ。 返事は鉄鎚だった。ブラフォードがタルカスに飛びかかった。騎士は苦しそうな表情で、その一撃を回避した。 タルカスはブラフォードに勝てないのだろうか。いいや、それは違う。『殺して』いいのならば、きっと彼は勝利できるだろう。 だがそれで何を手にする? それでタルカスは何をその手に掴むのだ? 戦えど戦えど友は言葉を返してくれなかった。魂を込めた一撃も、叫びと祈りを乗せた拳も刃も。全てすり抜け、ブラフォードをいたずらに傷つけるのみ。 二人はなおも激突する。互いの鎧に刃を突き立て、肌を裂き、肉を抉って急所を突く。 四本の足と二本の武器が踊るように跳ねまわり、二人はぶつかっては離れ、そしてまたぶつかる。 何故戦っているかもわからないぐらい必死で。誰のために刀を振るうかも考えられないぐらいひたすらに。 時が経ち、タルカスの息がすっかりあがったころだった。ブラフォードが槌をさげ、ぼそりと呟いた。 互いの姿が見えるぐらい近づいているのに、耳を澄まさなければ聞き落としてしまう、そんな小さな呟きだった。 「戦ったって何も戻りはしない。既に起きてしまった過去に、決して救済なんぞ訪れない。 俺たちの現在は歴史となってしまった。歴史を覆すことは決して叶わぬ、幻想でしかない。 そんなことはわかっている。そんなことはわかっているんだ」 タルカスの動きが止まった。ブラフォードは話を続ける。 「だがな、俺は忠義を誓ったのだ。俺は祖国に身を捧げ、王女に魂を捧げ、戦い続けるしかもう知らんのだ。 ならばそれを取りあげられたら、俺はいったいどうすればいいのだ。俺は何のために、誰のために戦い続ければいい?」 「ブラフォード……」 「だから、タルカス……だから俺は、俺は……―――」 柄を握り直すと、彼が顔をあげた。反射的に槍を持ち直したタルカスは、戦友の顔を見て、身を竦ませた。 メアリー王女が処刑されたまさにあの時、あの瞬間に舞い戻ったかのようだった。 たった今塗り返されたような真新しく、生々しい赤と黒。ブラフォードの顔は妄執の色に塗りつぶされ、かつて黒騎士と呼ばれた彼の面影は一切残されていなかった。 まるで一つの感情、恨みという感情そのものが、タルカスを見返していた。 「―――俺は、それでも、この世界を呪い続ける」 直後、雪崩のように彼の足元が崩れていった。沈みゆく地盤、崩壊する足元。しまったと思ったのとブラフォードが襲いかかってきたのは同時であった。 レンガ造りの道路と建物は、一見堅牢そうに見え、実は隙間への衝撃にたいそう弱い。 ブラフォードは会話の最中、そしてそれ以前から髪の毛を操り、要所要所に綻びを入れていた。 そして鉄鎚をぶち当ててはその衝撃を伝え、タルカスの知らぬところで罠を張り巡らしていた。 今その罠が牙をむき、タルカスに襲いかかった。これ以上ないほど隙だらけの姿をさらしたタルカスに、轟音を立てて鉄鎚が迫っていた。 だがブラフォードにとって唯一の誤算はタルカスの粘り強さだった。 ブラフォードは自分の力を過信していたわけではなかったが、それでもここまで粘られるとは思っていなかった。 全ての準備が整ったころに、戦いの場所は変わり、日が間もなく出ようとしていた。そしてそれが決着を変えた。 「ぐおおおおぉぉ!?」 両者にとって幸か不幸か、崩落した場所は川岸付近、崩落したのは日の出直前。 初撃をたたき込み、そのまま川にまで吹き飛んだタルカスを追おうと勢いづいたブラフォード。しかしその脚がはたと止まった。 恨めしそうに明るくなり始めた東の空を見、そして視線を戻てみれば、あの巨体が見えなくなっていたことに彼は舌打ちした。 なんて逃げ足の速いやつなんだ、そう毒づくもどうしようもない。 一撃を浴びせたというのに、タルカスのタフネスは人間離れしたもので騎士はどこへともかく、身を隠してしまったのだ。 「……ちッ」 最後に恨めしそうに、揺れる水面を一瞥すると、ブラフォードは踵を返し、建物の影へと姿を消した。 闇へ溶けて行った彼は、一度として振り返らず、そして足を止めなかった。 握りしめた鉄鎚から滴り落ちる血を気にもせずに、彼は暗闇の中に消え去っていった。 最後にザワリと揺れた髪の毛が空間を歪ませるように震え、そして彼はいなくなった。 後に残されたのは荒れ果てた戦場、窪んだ地面と決壊した河川場。 そして彼がその場を後にし、いくらか経った後。静寂を破るように唐突に、水を切る音が聞こえた。 そして水の中から、二本の腕が生え出た様に飛び出した。 満身創痍のタルカスは、川から這い出るとその場に崩れ落ちる。 血か水かもわからないぐらいに身体は液体で濡れ、鉄鎚の直撃を喰らった右腕は使い物にならなくなっていた。だらりとぶら下がる腕が痛々しい。 ぜえぜえと呼吸を繰り返し、タルカスは激しくせき込んだ。口から血を吐き大地を見つめながら、彼は唸るように言葉を口にした。血と水混じりに、苦しそうに彼は名を呼んだ。 タルカスは絶望していた。 自らの浅はかさ、愚かさ、滑稽さ。 拳と拳で語らえば、言葉を交わすまでもなく分かり合える。そんなものは虚しい幻想にすぎなかった。その事実が、彼には衝撃的であった。 それだけではない。自分は誰よりも彼のことを知っている、彼の真の理解者は俺しかいない。そう思っていた相手が、未だかつて見たことない表情を浮かべていた。 その時タルカスは恐怖したのだ。戦友の底知れない憎悪に。そして自分がああなっていたのかもしれないという事実に。 自らが築きあげたはずのものが、音を立てて崩れ去っていったかのようだった。 君主を失い戦友は立ち去り、後にはいったい何が残っているのだ。空っぽの祖国に一人きりの騎士に、一体何が守れるというのだろう。 「……―――」 タルカスが名前を呼んだ。その少女こそが、彼が唯一守れる、そして絶対に守りたいモノの名前だ。 戦いの最中何度も心が折れそうになった。友との和解が絶望となった時、それでもその名は彼を支えてくれた。 川に叩きこまれ、意識を手放しかけた時、彼を最後でつなぎ止めたのは少女の名前だった。 重い身体を引きずり、タルカスが立ち上がる。戦友が消えた先に一度だけ視線を向けるも、すぐに彼は空を見上げ歩き始めた。 ボロボロの身体と心を支えるのは、もはや少女の存在だけ。少女に会いたい、スミレに会いたい。その感情が彼を突き動かす。 あの笑顔を見れば、元気が湧いてきそうだ。今は疲れ、すぐにでも倒れそうだが、彼女に会えばそれもたちまち治るだろう。 スミレ……スミレに、会いたい。とにかく彼女の笑顔を見たい。今はもう、それしか考えられない。 「待っていろ、スミレ……」 タルカスは進む。シンガポールホテル、そこで元気で、けれども自分のことを心配し、気を揉むように待っているはずの少女のために。 タルカスは重い体を引きずり、歩き続けた。 ◆ 泣いている少女の姿が見える。血と氷の海で身体を縮こめ、冷たくなっている彼女の遺体。少女の頬には、涙の跡が残っていた。 壊れてしまうことがないように、俺は震える手で彼女を抱きあげた。 幼い身体は俺の両手に収まってしまいそうなほどに小さい。かつて飛ぶように跳ねまわっていた少女は、もう、動かない。 俺の頭は凍りついたかのように何も考えられず、一面、白に染め上げられる。唯一できたことと言えば、彼女の頬をそっと優しく撫でるのみ。 傍らに刺さった氷柱が夜の終わりに合わせるかのように、ゆっくりと溶けだした。 一筋の雫が水たまりに落ちると、ポチャン……と音を響かせていった。 どうしてこうなったのだ。こんな結末、俺は望んでなどいなかった。 少女を泣かせたくない、その一心で俺は戦うことを選んだはずだというのに。 少女に救われ、そんな少女をもう二度と失いたくない、そう思ったから俺は二度目の忠誠を彼女に捧げたというのに。 救われた恩を返すことはもう、叶わない。 少女は俺一人残し、はるか遠く手の届かない所へ逝ってしまったのだ。 そう、あの時と同じ。メアリーさまと同じように。 辺りを見れば真ッ二つに折れた棒が見える。執拗に追いまわされ、それでも懸命に逃げ惑った彼女の足跡が見える。 救いを求めていた彼女を、俺は救えなかった。全て手遅れになった今になって、俺はようやくここに現れた。 そして、そこに彼女はいたのだった。悲しそうに涙を流し、冷たく、硬くなった体のままで。 何故、何故、何故なんだ……ッ どうしていつも俺の手をすり抜け、全て、零れ落ちてしまうのだ……ッ! 目の奥が焼けるように熱い。唇は震え、せり上がる感情が喉元で暴れ回る。 神よ、天よ、運命よッ! これが貴様たちの答えなのか……? これがお前たちの真意だというのか……ッ?! ならば、問おう。何故なのだッ!? 何故彼女たちが死なねばならんのだッ なぜ彼女たちを、貴様らは殺したのだッ 死ぬべきはずでない女性(ひと)たちが死に、死ぬべき騎士(おれたち)が生き永えるッ どうしてッ どうしてッ どうしてなんだッ! 何がいったい望みだというんだッ 俺たちが、一体何をしたんだッ 何故こうも全てが狂ってしまうんだッ? 何故誰も幸せにならないんだッ!? 大切なものがあって、そのどちらかを選ばなければならない。断腸の思いで俺たちは選択するッ 忠義か命か。個人か民衆か。友か君主か。遵守か逸脱か。 大切なものを守るために、大切なものを裏切らなければならないッ 大切なひとを救うため、大切なひとを傷つけなければならないッ それが貴様らの答えだというのかッ それがお前たち、天のッ 神のッ 運命のッ! 『そんなもの』がお前たちがッ 俺たちにッ 彼女たちに示すッ 『救い』だとでも言いたいのかッッッ!! 「赦すもんか……俺は赦さんッ 俺は、貴様らを断じて赦さんぞォ!」 決して、決して、俺は赦さないだろう。 例え地べたに頭をつけ、泣き喚き、醜く涙を流し、懇願しようとも。それでも俺は決して赦すまい。 地の果てまで貴様らを、血が流れる限りに永久に、俺はお前たちを追いたてるッ 貴様らが俺から奪ったものは二つだ。 かつて遠い日に抱いた俺の理想。忠義の果てに夢見た、女王と戦友と過ごす日々。 少女に託した限りない明日。救われた命の限りを尽くし、彼女の行く先を照らそうと俺は固く誓ったはずだッた。 だが崩れ去ったものが、二度と紡がれることはない。 運命なんぞ、くそくらえだッ 俺は決して屈しない。どれだけ貴様らが俺を貶めようとも、俺は絶対ッ お前らなんかに屈しないッ ああ、そうだ。或いはこの感情は復讐なのかもしれない。 俺から全てを奪いさり、それを見て嘲笑うものたちへの……運命にもまれる不運なものたちを馬鹿にする傲慢者たちへの…… ―――復讐心だ ◆ 【C-4 シンガポールホテル/一日目 早朝(放送前)】 【タルカス】 [能力] 黄金の意志? 騎士道精神? [時間軸] 刑台で何発も斧を受け絶命する少し前 [状態] 疲労(大)、全身ダメージ(大)、右腕ダメージ(大) [装備] ジョースター家の甲冑の鉄槍 [道具] なし [思考・状況] 基本行動方針:主催者を倒す? 1:??? 【C-4 中央/一日目 早朝(放送前)】 【ブラフォード】 [能力] 屍生人(ゾンビ) [時間軸] ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前 [状態] 腹部に貫通痕、身体中傷だらけ、全身ダメージ(大)、疲労(中) [装備] 大型スレッジ・ハンマー [道具] 地図 [思考・状況] 基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す 0:とりあえず太陽の届かない場所に身を隠す。 1:強者との戦いを楽しむ。 2:ジョナサン・ジョースターと決着を着ける。 3:女子供といえど願いの為には殺す。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 前話 登場キャラクター 次話 061 アルトリアに花束を ブラフォード 107 fake 061 アルトリアに花束を タルカス 123 Faithful Dogs
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/29389.html
ここを編集 ■COCOLORS 撮影監督 ■テイルズ オブ クレストリア―咎我ヲ背負いて彼は発つ― 撮影監督 ■竜とそばかすの姫 撮影監督(李周美、町田啓と共同) ■ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン オープニングアニメーション2 撮影監督 ■ドラゴンボール超 スーパーヒーロー コンポジットスーパーバイザー(石塚恵子、佐々木果南と共同) ■関連タイトル Blu-ray 竜とそばかすの姫 スペシャル・エディション UHD-BD同梱BOX rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
https://w.atwiki.jp/jojoaa/pages/13.html
←3巻へ 5巻へ→ タルカスと黒騎士ブラフォード その② タルカスと黒騎士ブラフォード その③ タルカスと黒騎士ブラフォード その④ 英雄として瞑る 騎士たちの遺跡 中世騎士殺人修練場 あしたの勇気・うけ継ぐ者 その① あしたの勇気・うけ継ぐ者 その② あしたの勇気・うけ継ぐ者 その③